「スポーツは筋書きのないドラマ」というのは私のゆるぎない見解だが、オリンピックと言う最高の舞台で己のパフォーマンスを最大限に引き出し、世界中の人に感動を与えることはアスリート冥利に尽きると思う。
私は韓国で開催される今回のオリンピックは、その準備の遅れや財政難で盛り上がりに欠ける大会になるのではないかと危惧していた。まして大嫌いな日本人選手への風当たりが強く、不可解な判定にも悩まされるのではないかとさえ思えた。
しかし、蓋を開けてみれば、日本人アスリートたちの正々堂々とした戦いぶりや真摯な態度が全世界に感動を巻き起こしているし、不安視された「君が代」や「国旗掲揚」にも妨害行為などは起きていない。スポーツは政治や人種差別、身分や地位などは無縁の存在であることを再認識させられた。
そこで今回は、これまでの名場面を振り返り、特に心に残った出来事を取り上げたい。
1 友情は国境を越えて ~小平奈緒とイ・サンファ~
スポーツマンシップの極みを見た気がした。それはバンクーバー、ソチと2大会連続で金メダルを獲得した韓国のトップアスリート「イ・サンファ」と日本の小平の熱い友情物語に誰もが感動し、涙した。
2月18日(日)、小平奈緒はそれまで500mではW杯15連勝中という圧倒的な強さを引っ提げて平昌オリンピックに乗り込んだ。しかし、その前の1,000mでは金メダルにはあと一歩手が届かず銀メダルに終わっていた。リベンジに燃える彼女の最大のライバルは大会3連覇を狙う「イ・サンファ」だった。
プレッシャーがかかる中、彼女は韓国人スターターの時間差ピストルにも動じず、インスタートでロケットスタートからグングン加速し、一気にトップスピードに。そして最終コーナーを抜けるとそのまま疾風の如くゴールラインを駆け抜けた。なんとオリンピックレコードを更新する圧巻の記録。
実は集中し過ぎてサングラスを忘れてしまい、透明のレンズでレースに臨んだと後から炉辺談話として判明した。
この後、小平の人間性溢れる行動が賞賛を得た。次のレースに地元韓国のイ・サンファが出場することから、親友を気遣って騒然とする観客に向けて、口に手を当てて鎮まるようなジェスチャーを行った。
そして大親友の「イ・サンファ」が2位に終わると、彼女を気遣い、彼女に向かって歩み寄る抱き合ったのだった。そして2人が国旗を背負ってのウィニングラン。彼女は最大のライバルにして背中を追いかけてきた「イ・サンファ」にリスペクトしていることを告げたのだった。この国境を超えた微笑ましい光景に大観衆の鳴りやまない拍手がスタジアムを包み込んだ。観衆の誰もが感動し、涙した。
https://www.youtube.com/watch?v=BrMGAf_y0VU
https://www.youtube.com/watch?v=qoAvQ4d5nbc
https://www.youtube.com/watch?v=CpTp_sk9Jes
https://www.youtube.com/watch?v=or4c2Igs5mU
その後、2人並んでの記者会見で、小平が結果が出せず、ロッカールームで泣いていたときに、彼女が寄り添って一緒に泣いてくれたことを明かした。そして初めてW杯で優勝した小平に、悔しいはずなのにイ・ソンファはお祝いに「空港までのタクシー代を出してくれた」そうだ。それほどお互いをリスペクトし、親交を温めていた。政治問題では何かといがみ合う両国だが、スポーツは国境を越えることを教えてくれた。
オランダ語でインタビューに答える小平奈緒はコチラ
https://www.youtube.com/watch?v=QPL0pB2rKYs
小平奈緒の人間性が素晴らしいのはこれだけではない。1月に最大の親友だった住吉都選手を病気で失った。その深い悲しみが癒えないまま突入した平昌五輪。悲しみのどん底にいた彼女を救ったのは、亡き友が遺した言葉だった。「奈緒が金メダルを獲ったら私が獲ったのと同じ」。この言葉を胸に、小平は彼女と一緒に戦ったに違いない。しかし、彼女はこのことに一切触れず、天国の友に金メダル獲得を誓い、レースに挑んだのだった。
見事にコースレコードで金メダルを見事に獲得した後のインタビューで、アナウンサーから住吉さんのことを聞かれ、彼女は初めて大粒の涙を流した。イ・サンファとの友情に加え、亡き友に約束した金メダル。しかしそれを黙して語らず、内に秘めた闘志で叶えた彼女の人間性は、日本人の誇りでもある。
2 大怪我から僅か90日の復活劇
今大会で羽生結弦がメダルを獲得するなど、誰も期待できなかったに違いない。本大会の3か月前の昨年11月、NHK杯に向けての練習中に、4回転ループに挑み転倒。右足を痛打し、診察の結果「右足首靭帯損傷」だった。靭帯損傷は、骨折よりも治癒が長引くこともある。その間、公式の大会はすべて欠場し、ぶっつけ本番で平昌入りした。誰もが練習不足を懸念し、本当に羽生は出場できるのかと危ぶまれた。
ところが、彼は冷静だった。全大会のソチの王者は、周囲の不安を寄せ付けず、大きな仕事をやってのけた。2月16日(金)のSPでいきなり4回転サルコーを完璧に成功させ、詰めかけた多くの日本人ファンの前で完全復活を印象づけるスケーティングを披露した。ノーミスで111点を超える得点を獲得し、SPでダントツの首位に立った彼は、翌日のフリーでも4分半を堂々たる演技で終え、見事2大会連続の金メダルを獲得した。ファンの熱狂はもちろん、号外も出るなど、彼の復活劇は伝説となった。列島は大興奮に包まれた。これが今大会で日本人初の金メダルだったことで、大熱狂となった。しかも銀メダルが宇野翔馬で、表彰台の1位2位を独占する快挙を達成した。日本人が夢見ていたシーンが正夢となった瞬間だった。
彼の演じた陰陽師の「SEIMEI」(安倍清明)はまるで彼に乗り移ったかのように結界に守られ、リンクを縦横無尽に駆け巡り、それは神がかっていた。演技中も表彰式の身のこなしも、さらには優勝者インタビューでも彼はかっこよすぎた。
3 みんなで掴んだ銅メダル
4年前のソチ、弱冠17歳で臨んだ女子ジャンプの高梨沙羅。W杯で無敵の強さを誇った彼女が初めて味わう重圧。そして背負ったものの大きさに圧倒され、実力を発揮できずメダルは愚か4位に沈んだ。
悔しい思いのまま迎えた今シーズン。昨年までダントツでW杯の優勝数を誇った彼女の前に、大きな壁が立ちはだかった。身長差がある外国勢のライバルたちが台頭し、五輪までW杯で一勝もできないまま本大会へ突入した。
平昌特有の強風に悩まされ、それでも初の銅メダルを獲得した。共に出場した同僚の伊藤有希がすかさず彼女の元へ駆け寄り、抱き合って喜びを分かち合い泣いたのだった。
伊藤は自分も出場し、8位に終わったことで、悔しいはずなのに、誰よりも沙羅の銅メダルを祝福した。それは、4年前に一緒に臨んだソチで悔し涙に暮れた彼女を一番近くで見ていたから、涙が出るほど嬉しかったという。
沙羅自身も「これは私が獲ったメダルではない。一番いい色のメダルには届かなかったけれど、チームのみんなで勝ち獲ったメダルです」と言い、日本人の感動を誘った。
4 カーリング娘たちの奇跡のショット連発に世界中から賞賛の声
本橋麻里が作ったLS北見。全員が北海道北見市出身。「ロコ・ソラーレ」は「常呂の子」の「ロコ」を取り、ソラーレは「太陽」の意味。
チームのエース格でスキップの「藤澤五月」は、前所属の中部電力時代、ソチを目指した国内予選で敗れ、意気消沈し、カーリングへの意欲を失いかけていた。そんな時、同郷である本橋が「故郷の仲間たちと一緒にやろう」と声を掛け、「まだ自分を必要としてくれている人がいる」と一念発起。
また、同じ北見市出身の吉田知那美もまた、前所属チームを戦力外通告。路頭に迷っていたところ、声を掛けてきたのが本橋だった。
彼女達は、試合中もとにかく明るく、笑顔を絶やさない。失うものは何もないという開き直りもあるのか、プレッシャーを感じさせないほどカーリングを楽しんでいる。
このLS北見が素晴らしいのは、どこにストーンを投げるか、あるいはどこに置くかをワンショットごとにチームで話し合って決めている。そして北海道弁の「そだね~」は流行語になってもおかしくないほどで、あれに癒されている男性諸氏も多いだろう。試合中も無邪気に笑う様子は、韓国国内でも爆発的な人気を得ていた。一方の韓国は、予選リーグトップの成績ながら、試合中は常に厳しい顔つきで相手を威圧し、笑顔を一切見せない戦闘モード。日本チームとのギャップは凄い。
ところで全部で10チームで総当りで9戦する一次リーグ。そこで、たとえ劣勢でも最終エンドや延長戦にもつれ込んでも最後まで決して諦めない姿勢と、挫折を味わいながらも身につけた経験豊富なその卓越した頭脳は、このオリンピックという大舞台で大きく開花した。そして2月20日までに一次リーグ勝ち越しを決め、日本勢初の準決勝進出を果たした彼女達の頑張りは、日本中にしっかりと届いているし、大きな感動を与えている。
藤澤五月 https://www.youtube.com/watch?v=zt91dO0tH-M
吉田知那美 https://www.youtube.com/watch?v=WD2b-Ik-bcw
ロコ・ソラーレ誕生から平昌オリンピック出場までの軌跡を追った感動ドキュメンタリーです。
さて、今回は礼儀正しく真摯に己の種目と向き合い、ひたむきに挑戦を続ける日本人アスリート達の生き様や横顔に触れた。感動して涙したファンも多かったに違いない。
私たちは、アスリート達のひたむきな努力を賞賛するとともに、今後も継続して激励していかなければならないように感じた。
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記事作成:2月19日(月)