私は個人的に20世紀末(1980年代~1990年代)に制作・放映されたドラマは人間の本質や泥臭さ、人間模様を描いた秀作が多いと思っている。その20年間は、当時10代後半から30代半ばだったことで、テレビドラマに少なからず影響を受けていた。それは自分の人生において行き先を照らす役目をしてくれたし、生き方在り方を教えてくれた存在でもあった。
高校卒業を間近に控え、自分の進路を見失いかけていた時期もあった。浪人生活を強いられ、その先に光や幸せはあるのかと思い悩んだこともあった。10年後や20年後の自分に不安を覚え、もがき苦しんでいた19歳の自分。今思えば、苦しんだ分、一度も転職を考えずに、今の職業に生き甲斐を感じて30年近くやって来た。
そんな思い悩んだ時期に、私を励まし、勇気をくれたり、やる気を起こさせてくれたのがドラマだった。自分の境遇と重ね合わせたり、主人公の職業に憧れたり、進むべき方向を示す道しるべの役目を果たしてくれた。
そんな20世紀末に私が人生に大きく影響を受けたドラマを5つ取り上げたい。
北の国から
このドラマのレギュラー放送が終了してすぐに、私は北海道に移り住んだ。2年間に麓郷を訪れ、当時のロケ地の佇まいや雰囲気を味わった。
倉本聰の人間味あふれるセリフや登場人物の心の動きや葛藤、厳しい大自然と向き合って暮らすことで、人間の本当の姿を取り戻そうという気概に満ちている。五郎、純、蛍を中心に彼らを温かく見守るキャスト達は、人間味に溢れている。
残念なのは、このドラマに出演された俳優陣が年々この世を去っているということで、続編を期待していた私はショックを隠せない。地井武男さん、大滝秀治さん、斎藤晴彦さん、大友柳太朗さん、古尾谷雅人さん、レオナルド熊さん、菅原文太さん、北村和夫さん、今井和子さんなどがそうだ。そういえば、主役の田中邦衛さんもとんとご無沙汰となっている。リハビリを兼ねて介護付き特別養護老人ホームにいて、最近自宅に戻ったという噂もある。車椅子での生活を余儀なくされているらしい。あれだけの大スターだった方が、晩年を静かに暮らしているかと思うといたたまれない。
昨日、悲別で
このドラマは放送時期が北の国からと重なる。レギュラー版が終了した倉本聰が次に書き上げたテレビドラマが天宮良、石田えりが主演したこのドラマだった。北海道の萎びた炭鉱街を舞台に、ミュージカルに目覚めた青年が上京してバーテンダーをしながらタップダンスのショーに出て、ダンサーとしての夢を追いかける。地元に残して来た仲間や同じく上京し、スキャンダルに巻き込まれた女性同級生を守るというストーリーだった。
倉本聰は北海道・富良野に居を構え、その中で富良野塾を開講し、脚本家としての弟子を育てながら創作活動を行っていた。悲別とは上砂川町のことで、国鉄は赤字、エネルギー革命により、石炭は切り捨てられていく山の男たちの悲哀にも溢れていた。
仲間意識や家族との絆、いったんは捨てた故郷を想い、そこで蠢く人間模様を描き切った青春ドラマだった。
白線流し
松本市の松本北高校(架空)卒業間近の3年生を中心とした男女7人の青春物語。偶然出会った定時制生徒との友情、恋愛を松本の静かな風景の下で高校卒業まで綴っていくストーリー。長瀬智也演じる大河内渉に密かに思いを寄せる酒井美紀演じる七倉園子。ぎこちなく、そして真っすぐに人と向き合い見つめる純粋ストーリーは、当時の時代風潮。青春ドラマとしてそれぞれの仲間が傷つきながら巣立ってく人生観あふれるドラマだった。
北の国からと同様、レギュラー放送が終わってからも数年置きにスペシャル版が放送され、出演者たちのその後を綴った。このドラマで酒井美紀の人気が爆発した。
ひとつ屋根の下1&2
かつて実業団のマラソン選手だったが、膝の故障で引退した主人公・柏木達也(江口洋介)は、自身の婚約を報告するために、7年前の両親の交通事故以来生き別れになった兄弟達を訪ね歩く。妹の小雪以外最初は達也を拒絶していた兄弟達も徐々に理解を示し、話が進むにつれてやがて達也の下で兄弟皆が暮らすようになる。毎日ケンカばかりしながら少しずつ絆を深めていくが、やがて家族が崩壊の危機に瀕する出来事が何度も訪れる。江口意外にも福山雅治、酒井法子、いしだ壱成、大路恵美、山本耕史という豪華キャストだった。パート1は1993年4月から放送、パート2は1997年4月から放送。
やはり秀逸した作品は続編が制作されるようだ。21世紀でも「JIN-仁-」が続編制作されたこので理解できると思う。
記事作成:1月初旬~中旬