日本のプロ野球は交流戦を含め、1シーズン144試合も戦う長丁場だ。そこには様々な名勝負やドラマがある。しかし、途中で成績不振を理由に「休養」に入る監督がいる。休養と言えば聞こえが良いが、それは個人の名誉保持のためであり、事実上の解任である。それが証拠に、シーズン中に復帰した監督は、病気や怪我による休養以外は皆無だ。勝負の世界はなかなかシビアだ。
今年のシーズンも、オープン戦でダントツ首位だったロッテの伊東監督が、最下位に沈み、5月時点で自力Vが消滅するなど、「休養」の危機にさらされている。実績十分な監督だけに、選手の踏ん張りに期待したい。
では、これまでに休養に入った監督はどれくらいいたのだろうか?調べてみた。
加藤喜作(南海軍:1942年、三谷八郎の退任に伴い監督代行に就任した岩本義行が監督
代行を退任した為に「監督代行の代行」に就任)
宮崎剛(大洋ホエールズ:1972年に別当薫の休養に伴い監督代行に就任した青田昇が途
中で体調を崩して休養した為に「監督代行の代行」に就任)
土橋正幸(ヤクルトスワローズ:1984年に武上四郎の休養に伴い監督代行に就任した中
西太が途中で体調を崩して休養した為に「監督代行の代行」に就任)
島野育夫(中日ドラゴンズ:1995年に高木守道の休養に伴い監督代行に就任した徳武定
祐が成績が安定せずに休養した為に「監督代行の代行」に就任)
21世紀以降は・・・
02年9月25日 横浜 = 森祇晶監督 → 黒江透修代行
03年4月23日 オリックス = 石毛宏典監督 → レオン代行
03年9月 7日 中日 = 山田久志監督 → 佐々木恭介代行
https://www.youtube.com/watch?v=xIFFytEVBzY
08年5月21日 オリックス = コリンズ監督 → 大石大二郎代行
09年5月17日 横浜 = 大矢明彦監督 → 田代富雄代行
10年5月26日 ヤクルト = 高田繁監督 → 小川淳司代行
12年9月25日 オリックス = 岡田彰布監督 →森脇浩司代行
14年6月 4日 西武 = 伊原春樹監督 → 田辺徳雄代行
https://www.youtube.com/watch?v=LM8KL_t51HQ
15年6月 2日 オリックス = 森脇浩司監督 → 福良淳一代行
https://www.youtube.com/watch?v=qdZt_8oBr6E
16年8月 9日 中日 = 谷繁元信監督 → 森繁和代行
https://www.youtube.com/watch?v=-Bik-BRBI94
【注】病気療養による06年王貞治監督(ソフトバンク)14年星野仙一監督(楽天)を除く
シーズン終了後に代行者が正式に監督就任した例
藤村富美男(大阪タイガース、1955年に岸一郎の退任により監督代行就任→翌1956年に
正規に監督就任)
加藤春雄(近鉄パールス、1957年に芥田武夫の退任により監督代行就任→翌1958年に
正規に監督就任)
藤本定義(大阪タイガース、1961年に金田正泰の退任により監督代行就任→翌1962年に
正規に監督就任)
西沢道夫(中日ドラゴンズ、1964年に杉浦清の退任により監督代行就任→翌1965年に
正規に監督就任)
長谷川良平(広島カープ、1965年に白石勝巳の退任により監督代行就任→翌1966年に
正規に監督就任)
別当薫(大洋ホエールズ、1967年に三原脩の退任により監督代行就任→翌1968年に
正規に監督就任)
濃人渉(東京オリオンズ、1967年に戸倉勝城の退任により監督代行就任→翌1968年に
正規に監督就任)
金田正泰(阪神タイガース、1972年に村山実の指揮権の返上(現役投手に専念)により
監督代行就任→翌1973年に正規に監督就任)
土橋正幸(ヤクルトスワローズ、1984年に武上四郎・中西太の退任により監督代行就任→
翌1985年に正規に監督就任)
藤田平(阪神タイガース、1995年に中村勝広の退任により監督代行就任→翌1996年に
正規に監督就任)
大石大二郎(オリックス・バファローズ、2008年にテリー・コリンズの退任により監督代行就
任→翌2009年より正規に監督就任)
小川淳司(東京ヤクルトスワローズ、2010年に高田繁の退任により監督代行就任→翌
2011年に正規に監督就任)
森脇浩司(オリックス・バファローズ、2012年に岡田彰布の退任により監督代行就任→翌
2013年に正規に監督就任)
田辺徳雄(埼玉西武ライオンズ、2014年に伊原春樹の退任により監督代行就任→翌2015
年に正規に監督就任)
福良淳一(オリックス・バファローズ、2015年に森脇浩司の退任により監督代行就任→翌
2016年に正規に監督就任)
森繁和(中日ドラゴンズ、2016年谷繁元信の退任により監督代行に就任→2017年に正規
に監督就任)
ざっと振り返っただけでもこれだけの監督がシーズン半ばで「休養」し、解任されている。プロは結果がすべてと考えれば当然と言えば当然だが、やはり厳しい世界だ。あの長嶋監督や王監督ですら、巨人時代は、シーズン後に解任が発表された。選手としては超一流でも、監督としては結果が重視された。
今シーズンを見てみると、ロッテの伊東監督は厳しい立場にあるし、中日の森監督も、このまま低迷を続けると、電撃的に「休養」に入って、コーチが監督代行するパターンに陥るかもしれない。
また、信じたくは無いが、巨人の高橋由伸監督も2年連続でV逸すれば、解任の危機にある。かつて堀内監督は2年間指揮を執ったが、優勝できず、その責任を取って辞任した。今年の巨人はトレードや球界初のFA3人獲得で戦力補強したにもかかわらず、優勝を逃したとあらば、ナベツネ氏の逆鱗に触れ、監督交代も現実味を帯びそうだ。
その兆候はすでに現れている。6月4日(現在)、10連敗を喫し、首位の広島とは9.5ゲーム差。昨季も4位とBクラスに沈み、2年連続で優勝どころかBクラスに甘んじればクビ宣告は時間の問題か?高橋監督のプライドを尊重すれば、自ら進退伺いを提出し、休養に入るしか道が無くなる。
後任だが、原監督が復帰にはまだ時間を要しそうなので、桑田氏か松井氏に白羽の矢が立つかもしれない。原氏が日本代表監督に就任する可能性もあるし、そうなると巨人の監督人事はますます混迷するかもしれない。
個人的に松井氏は監督には向いていないと思っている。細やかな野球は出来そうにない。監督は緻密で選手の調子の良し悪しを見抜く眼力と観察力に優れていなければ務まらない。松井氏はその素質に欠けている。打者出身だけに、打ち勝つ野球を掲げるかもしれないが、打線は所詮水もの。野球は投手力と守りが重要。畑違いのような気がする。
今の巨人の窮地を救うには監督交代のカンフル剤が必要だが、歴代巨人軍の監督を見てもシーズン途中での休養は無い。たぶん今シーズン終了までは、球団社長やオーナーも我慢を重ねるが、原政権時代から3年連続でV逸となれば、監督交代は必至だ。
記事作成:5月15日(月)~