ペナント開幕直前まで行われた第4回ワールドベースボールクラシック(WBC)。各チームから主力を一堂に会し、V奪還を至上命令として果敢に挑んだのは既知の事実だ。
一次予選から並居る強豪と互角以上に戦い、連戦連勝で負け無しで、ベスト4に進出した日本チームは、アメリカに乗り込み、地元USAと対戦。健闘むなしく惜敗し、2大会ぶりの優勝はならなかったが、練習試合で惨敗し続けたチームが劇的に変身を遂げ、日本野球の面目を保ったことは価値がある。
ところがWBC終戦後、各チームに戻り、3月下旬から始まったペナントレースに参戦したWBC戦士たちだが、異変に見舞われている。いずれの選手も低迷している。これは疲労が原因なのか、あるいは短期決戦ながら合宿状態で日の丸を胸に極度の重圧と闘った末の虚脱感なのか、どうもパッとしない成績に甘んじている選手が多い。
ペナント開始から一ヶ月経った今、4月終了時点でのWBC選手の成績を見ると、一目瞭然。昨季までの成績とは雲泥の差であることがわかった。
では論より証拠。検証してみたい。
<WBCメンバー>
打者 昨季の成績 今季の成績(4月終了時点)
打率 本塁打 打点 打率 本塁打 打点 評価
DH 山田哲 .304 38 102 .191 2 8 ×
2 菊池 .315 13 56 .254 2 10 ×
3 青木 .283 4 28 .321 1 5 ○
4 筒香 .322 44 110 .275 1 12 ×
5 中田 .250 25 110 .170 1 4 ×
6 坂本 .344 23 75 .330 1 11 △
7 平田 .248 14 73 .260 4 15 ○
8 松田 .259 27 85 .220 1 6 ×
9 小林 .204 4 35 .153 0 1 ×
控え
内川 .304 18 106 .340 5 20 ○
田中 .265 13 39 .288 0 9 ○
秋山 .296 11 62 .330 5 11 ○
鈴木誠 .335 29 95 .317 5 19 ○
打者で絶不調なのは、山田、中田、小林。山田は2年連続トリプルスリーの面影無し。中田も故障で一時戦線離脱し、フォームを崩して打率2割に届かない。また、WBCでは嶋の離脱で非本代表の正捕手に抜擢された小林。ラッキーボーイとして注目されたが、ペナントレースでは鳴かず飛ばず。1割5分台では話にならない。しかも打点はたったの1。
投手 昨季の成績 今季の成績(4月終了時点)
防御率 勝 敗 SH 防御率 勝 敗 SH 評価
菅野 2.01 9 6 1.76 3 0 ○
則本 2.91 11 11 3.81 2 1 ×
千賀 2.61 12 3 3.86 3 1 △
増井 2.44 10 3 10S 3.00 2 1 3S △
宮西 1.52 3 1 39S 8.10 0 1 5S ×
秋吉 2.19 3 4 19S 0.82 3 0 4S ○
松井 3.32 1 4 30S 0.53 2 1 4S ○
牧田 1.60 7 1 25H 0.00 0 0 5H ○
比較的打者に比べて投手は昨季よりも好成績を挙げている選手が多い。やはり日本の野球は投手力がものを言っているのがよくわかる。打線は水モノで、好投手の前では手も足も出ないことがよくわかる。
防御率が良い投手をWBC戦士に選んでいることが一目瞭然。ベテランよりも若い投手が多い。それに世界一を目指すこの大会は、若くてチャレンジ精神に溢れ、多少無理が利く選手を選ぶ傾向が強い。監督は、各球団から選手を出して貰っている手前、怪我をさせてはならない。
今回は、残念ながら大谷が出場を辞退し、戦力ダウンしたが、ベスト4に進出できたことで、面目は保ったと思う。小久保監督は勇退したが、次回は原監督か落合監督で臨むべきだと思う。
王、原、山本、小久保と監督が替わったが、現役でなければ原監督がベストだ。調子のよしあしを見抜く眼力や観察力は確かだし、起用法も上手い。落合も実績十分。選手の個性や実力を引き出す力は折り紙つき。ぜひ次回の第5回大会はV奪還を目指し、プロ総動員して一丸となってほしい。
おそらくは大谷はメジャーに行くであろうから、WBCで彼の雄姿を見ることは一度もないということになる。並みいるメジャーの強打者を165km/hの剛速球できりきり舞いさせるシーンを見たかった。
記事作成:4月29日(土)~