歴代の内閣の中には、法律の番人たる法務大臣の職務に身を置きながら、その職責を果たさない犯罪者が数多くいた。つまり、最高裁が死刑判決を確定し、主たる理由もないのに、その6か月以内に「死刑執行命令書」に判を押さず、職務放棄した方々だ。
私自身、現在、慶應義塾大学法学部法律学科で学ぶ身として、このような悪行が罷り通る悪しき慣習は果たして合法なのか?はたまた法務大臣の違法行為に当たるのか、長年疑問に感じていた。複数の人命が奪われなければ、死刑になる可能性が低い現行の法令は、現状にそぐわない。何の罪もない人間が、凶悪犯罪によって命を落としたのに、殺人者がのうのうと生きながらえ、更生の道を与えられるなど言語道断。被害者の魂は浮かばれないし、遺族感情が生存を許せる筈がない。国民の8割以上が死刑容認している理由もこうした観念によるものだろう。
では何故、法務大臣の座にいながら、職責を全うしないのか?
確かに刑事訴訟法475条第には、確かに下記のような条文がある。
1. 死刑の執行は、法務大臣の命令による。
2. 前項の命令は、判決確定の日から6箇月以内にこれをしなければならない。但し、上訴権回復若しくは再審の請求、非常上告又は恩赦の出願若しくは申出がされその手続が終了するまでの期間及び共同被告人であった者に対する判決が確定するまでの期間は、これをその期間に算入しない。
刑の執行を停止できる事由に関する条文は
刑事訴訟法第479条
1. 死刑の言渡を受けた者が心神喪失の状態に在るときは、法務大臣の命令によって執行を停止する。
2.死刑の言渡を受けた女子が懐胎しているときは、法務大臣の命令によって執行を停止する。
3.前2項の規定により死刑の執行を停止した場合には、心神喪失の状態が回復した後又は出産の後に法務大臣の命令がなければ、執行することはできない。
4.第475条第2項の規定は、前項の命令についてこれを準用する。この場合において、判決確定の日とあるのは、心神喪失の状態が回復した日又は出産の日と読み替えるものとする。
つまり、刑の執行を停止できる条件とは、よほどのことが無い限り停止できるものではない。個人の信条や宗教的理由など取ってつけたような勝手な判断で停止するなどあり得ない話だ。それは自分が人殺しのために手を汚したくない弱虫以外の何物でもない。法令を順守できない者は、法務大臣など引き受けるべきではない。
歴代の法務大臣を見れば、女性の大臣は、死刑執行を躊躇い、男性の大臣は執行を意に介さないような判断をしている。こんなことはあり得るのか?人が変われば、執行数が変化することなど。死刑になりたくて犯罪を犯し、人を殺めた死刑囚もいる。これでは蛇の生殺しだろうし、拘置所で生きながらえさせることも、その食事代など、国民の血税が使われている。
私から言わせれば、死刑執行しない法務大臣は腰抜け以外の何物でもないが、ではここで、2001年以降の歴代法務大臣に就任した方で、死刑執行数はどうなっているか比較するために掲載したい。なお、短命内閣では比較にならないので、在職日数が100日以上を掲載する。
法務大臣名 内閣名 就任月日 在職日数 死刑執行数
森山 眞弓 小泉1 2001.4.26 880日 5人
野沢 太三 小泉改 2003.9.22 372日 2人
南野知恵子 小泉改 2004.9.27 400日 1人
杉浦 正健 小泉改 2005.10.31 331日 0人
長勢 甚遠 安倍 2006.9.26 336日 10人
鳩山 邦夫 安倍福田 2007.8.27 342日 13人 21世紀最多執行
森 英介 麻生 2008.9.24 358日 9人
千葉 景子 鳩山・菅 2009.9.16 367日 2人 元弁護士 刑場公開
江田 五月 菅改造 2011.1.14 232日 0人
平岡 秀夫 野田 2011.9.2 134日 0人
小川 敏夫 野田改 2012.1.13 144日 3人
滝 実 野田改 2012.6.4 120日 4人
谷垣禎一 安倍 2012.12.26 617日 11人
上川 陽子 安倍改 2014.10.21 在任中 0人
他にも執行しなかった法務大臣は、柳田稔、仙谷由人、田中慶秋、、松島みどりがいる。
このように、法務大臣の特権ではないのに、時の大臣の胸の内ひとつで執行したりしなかったりである。このような任務不履行が許されていいのだろうか?法律に則って、職務を遂行した大臣が非難の対象になるなどもってのほかで、最も裁かれるべきは職務を全うしなかった大臣たちだ。
では、Yahoo!知恵袋にあった、法務大臣が死刑命令を反古にしていることについての国民感情を代弁している意見と、死刑執行命令書に判を押さない大臣が、法律違反に当たらないとする見解を紹介したい。
意見 1
法務大臣が死刑執行を個人的な信条により、拒否するなら、
法務大臣の職に就くべきではありません。
逆に議員の立場において、死刑廃止についての立法を行うのがスジです。
法によって死刑を宣せられた受刑者に対し、
個人的信条を理由に死刑執行命令を出さないのであれば、
死刑囚もまた、個人的信条において弁護されるべきです。
死刑は重いことであるのはよくわかりますが、
法治国家としてあってはならない、示しがつかないことだと思います。
法の精神はとても大事です。
民主党の議員は方の精神ではなく、法の技術的解釈により動く傾向があります。これは大変に危険なことです。
意見 2
死刑確定者Xが、国に対して、法務大臣が死刑判決確定の日から6ヶ月以内にXに対する死刑執行を命じなかったことが刑事訴訟法475条2項に違反すると主張して、国家賠償法1条に基づき、慰謝料の支払いを求めた事案について、東京地裁平成10年3月20日判決は、刑事訴訟法475条2項の趣旨について触れつつ、判断を示していますので引用しておきます(判例タイムズ983号222頁)。
「一 刑事裁判の執行は、一般に、その裁判をした裁判所に対応する検察庁の検察官の指揮のみをもってこれを行い得るものとされているが(刑訴法472条)、刑訴法475条1項が特に、「死刑の執行は、法務大臣の命令による。」と規定している趣旨は、死刑執行という事柄の重大に鑑み、特に慎重な態度で挑むため、その指揮を我が国の法務行政事務の最高責任者である法務大臣の命令に係らせたものであると解される。
そして、刑訴法475条2項本文は、法務大臣の死刑執行命令は、死刑判決確定の日から6ヶ月以内にしなければならないと規定している。
思うに、同項の趣旨は、同条1項の規定を受け、死刑という重大な刑罰の執行に慎重な上にも慎重を期すべき要請と、確定判決を適正かつ迅速に執行すべき要請とを調和する観点から、法務大臣に対し、死刑判決に対する十分な検討を行い、管下の執行関係機関に死刑執行の準備をさせるために必要な期間として、6ヶ月という一応の期限を設定し、その期間内に死刑執行を命ずるべき職務上の義務を課したものと解される。
したがって、同条2項は、それに反したからといって特に違法の問題の生じない規定、すなわち法的拘束力のない訓示規定であると解するのが相当である。(中略)
四 さらに、原告は、刑訴法475条2項は、B規約6条1項に反する恣意的な取扱いを許容するものではないから、法務大臣が刑訴法475条2項に違反して原告に対する死刑執行を命じない行為は、国家賠償法1条1項の適用上違法と評価されるべきであるとも主張する。
しかし、既に検討したとおり、刑訴法475条2項は法的拘束力のない訓示規定であると解すべきであるから、法務大臣の同項に違反する行為は、それが恣意的な判断に基づくと評価されるか否かにかかわらず、国家賠償法1条1項の違法の問題を生じさせるものではない。」
要するに、刑訴法475条2項は、それに違反したからといって特に違法の問題を生じない、すなわち法的拘束力のない訓示規定であり、また、法務大臣に対し期間内に死刑執行を命ずるべき国に対する職務上の義務はあるが、死刑確定者に対する義務はないということです。
言い換えると、法的拘束力のない訓示規定なのですから、6ヶ月という期間にほとんど意味がないことになります。
どちらもなるほどと思わせる、ごもっともな意見だが、日本人の8割以上が死刑制度存続を容認していることがすべてを物語っている。死刑制度が廃止されれば、凶悪犯罪が増える懸念があること、人を無慈悲に、あるいは無差別に殺すような輩を生きながらえさせることへの反発。しかもその食事代ですら、我々国民の血税が使われていることにも納得できない。中には死刑になりたくて人を殺す輩もいるから腹立たしい。
近年、日本でも毎日のように日本全国で殺人事件が起こっている。もはや安全神話などなく、欧米並みの世俗だ。その被害者は女性や子どもなどの弱者がほとんどだが、法律を厳しくし、罪なき人の命を奪うような行為は厳しく罰しないと、犯罪は減らないように思える。したがって、死刑囚を野放しにするのではなく、重罪を犯した犯罪者として、見せしめの意味でも、法務大臣は死刑を執行するべきであると声を大にして言いたいと思う。
記事作成:5月29日(木)