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Channel: 時遊人SUZUのひとり言
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パーリーグの逆襲

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 20年ほど前までは、プロ野球界では「人気のセ」、「実力のパ」と呼ばれた時代だった。「野球職人」と呼べるほど実力のある選手を揃えているパ・リーグだったが、何故か観客動員が少なく、毎試合、客席は閑古鳥が鳴くほどガラガラの状況が続いていた。有名な大投手や大打者はパ・リーグに所属していたし、オールスターゲームでは、パ・リーグのほうが大差で勝ち越していた。主な有名選手を球団別に挙げたい。

 西鉄・・・稲尾、中西、豊田
 西武・・・田淵、太田、清原、秋山、石毛、工藤、郭、松沼兄弟、森
 阪急・・・福本、加藤、長池、山田、山口、足立
 南海・・・野村、江本、門田、香川
 ロッテ・・弘田、村田、有藤、落合、袴田
 東映・日本ハム・・・張本、高橋直樹、島田、柏原、間柴
 近鉄・・・平野、栗橋、大石、鈴木、石渡、野茂
 東映・日本ハム・・・張本、高橋直樹、島田、柏原
 
 これだけの名選手がいたのに、どういうわけか在京球団が少なかったせいもあって、人気薄だった。
 この現状を打破するために、あれこれと涙ぐましいような改善策を張り巡らした。まず、漫画家の水島新司さんがひと役買って、パ・リーグ球団所属の主人公を描いた。とりわけ大阪・南海ホークスのファンだった彼が「あぶさん」を、そして架空の球団「東京メッツ」では、女性投手・水原勇気が活躍する「野球狂の詩」が連載された。また、少年チャンピオンで大人気シリーズだった「ドカベン」の登場人物の大部分をパ・リーグの球団にプロ入り入団させた。不知火、土井垣、犬飼、影丸、殿馬、山田、岩鬼、里中などがそうだ。
 また、パ・リーグの浮上策として、セ・リーグでは実施していないシステムを多数導入した。まずは、長いシーズンを間延びしないように、65試合ずつの前期&後期の二期制とした。サッカーの第1ステージと第2ステージと同じシステムだ。優勝チームが異なる場合には、5試合制のプレーオフを実施し、日本シリーズ進出チームを決した。また、セ・リーグにはない独自の制度として指名打者(DH)制度を取り入れた。投手がバッターボックスに立たないため、攻撃重視型の制度として定着させた。

 このような人気回復策を導入したが、実際問題として、あまり効果が得られなかった。球団経営は苦しく、1980年代以降、球団の身売りが相次いだために、そこで更なる対策に乗り出した。偶然が生んだ結果オーライの対応策もあった。ではどのような試みが奏功したか振り返りたい。

 1 ドラフトで、」有望な人気スター候補選手がこぞってパ・リーグへ入団した。特に松坂世代。

 ①イチロー②野茂③清原④松坂⑤杉内⑥新垣渚⑦和田⑧涌井⑨成瀬⑩ダルビッシュ有⑪田中将大⑫斎藤佑樹⑬大谷翔平⑭中田翔⑮金子⑯中島裕之⑰川崎

 イケメンも多かった。女性ファンが多く球場に足を運ぶようになった。

 2 ドーム球場建設で観客動員数を増加

 セ・リーグは巨人(東京ドーム)と中日(ナゴヤドーム)しかないのに、パ・リーグは4チームがドーム球場を本拠地にした。日本ハム(札幌ドーム)、西武(西武ドーム)、オリックス(大阪ドーム)、そしてソフトバンク(福岡ドーム)だ。雨天中止が無くなり、順調に試合数を消化できるようになった。

 3 地域密着

 パ・リーグは全国に幅広く本拠地を設定した。地域密着の地方球団の色合いが濃い。

 日本ハム(札幌)、楽天(仙台)、西武(所沢)、ロッテ(千葉)、オリックス(大阪)、ソフトバンク(福岡)という具合に、うまく全国に散らばっていて、広島のように市民球団のような存在だ。在京球団はゼロ。一方、セ・リーグは首都圏に3チーム(巨人とヤクルトは東京でDeNAは横浜)、名古屋、大阪、広島と比較的大都市圏に集中している。
 応援方法も独特で、「稲葉ジャンプ」など球場が一体となって応援で盛り上がれるようになった。

 4 ファンとの距離を近くし、ファンサービスを充実させた。

 巨人などは年1回のファン感謝デーを実施しているが、ファンと選手の距離が遠かった。しかし、ロッテのバレンタイン監督時代に、選手がお客様を出迎えたり、握手会やサイン会など、ファンに近づくような方策を実施し、一気に距離が縮まり、応援のし甲斐も出て来た。また、プロポーズ始球式などのユニークなイベントも積極的に取り入れるようになった。マスコット人形を取り入れたのも、パ・リーグのほうが先だった。日本ハムに入団した新庄の働きも大きい。

 5 個性的な大物外国人が多く日本球界に入団した。

 西武・・・テリー、デストラーデ、マルチネス
 阪急・・・マルカーノ、ブーマー、アニマル
 ロッテ・・・アルトマン、レオン、リー
 近鉄・・・マニエル、ローズ
 南海・・・スタンカ
 日本ハム・・・クルーズ

 6 実力も昔のまま

 交流戦が行われて10年が経過したが、毎年のようにパ・リーグが勝ち越している。順位表を見れば、上位を占めているのはパ・リーグの球団ばかり。

 2005年 千葉ロッテ
 2006年 千葉ロッテ
 2007年 日本ハム
 2008年 ソフトバンク
 2009年 ソフトバンク
 2010年 オリックス
 2011年 ソフトバンク
 2012年 巨人軍
 2013年 ソフトバンク
 2014年 巨人軍

 10年間で8度がパ・リーグのチームが優勝。しかもパ・リーグが4チームが優勝しているのに対し、セ・リーグの優勝チームは巨人だけ。リーグの対戦成績は2009年のセ・リーグ勝ち越しを除き、9回はパ・リーグが勝ち越している。通算ではパ・リーグの804勝730敗だ。まったく歯が立たない状況。

 7 メジャー挑戦選手はパ・リーグに多い

 野茂、イチロー、松井稼頭央、吉井、和田、西岡、松坂、伊良部、長谷川、中島、城島、田口、井口、多田野、小宮山、小林雅英、川崎、大塚、岩隈、ダルビッシュ、田中、田中賢介など。

 やはり実力が歴然なので、有望な選手はパ・リーグに多い。だからメジャーへの挑戦者が多いのも合点がいく。

 以上、パ・リーグの逆襲というテーマにした理由がわかったと思う。今はもう「人気のセ」「実力のパ」などとは言わせない。立場が逆転している。ドラフトでも、昔なら露骨に「在京セリーグ」希望などと有力選手が声高らかに希望を述べていたが、年俸の差はないし、巨人戦の中継もめっきり減り、交流戦も導入され、そしてFA制度も導入されたので、入ん段階での格差は全くなくなったと言って良い。江川・元木・菅野のように、巨人以外は拒否などという例も少なくなった。

 最後に、本当に今日のテーマを例証するために、観客動員数の比較をデータで挙げたい。

 <1974年> 長嶋引退、中日、ロッテ優勝の年

 セ・リーグ  合計 7,595,200人
 パ・リーグ  合計 3,501,300人

 1位 巨人   年間合計観客動員数 2,585,500人 (セ・リーグの3分の1)
 2位 中日   年間合計観客動員数 1,360,000人
 3位 阪神   年間合計観客動員数 1,084,000人
 4位 ヤクルト 年間合計観客動員数 1,066,700人  
 5位 ロッテ   年間合計観客動員数   872,000人
 6位 大洋   年間合計観客動員数   849,500人
 7位 西鉄   年間合計観客動員数   788,100人
 8位 広島   年間合計観客動員数   649,500人 
 9位 南海   年間合計観客動員数   564,100人
10位 東映   年間合計観客動員数   550,000人

 以下、阪急、近鉄

 なんと8位までをセ・リーグ6球団が占める。これは巨人戦になると観客数が大幅に伸びたことがわかる。

<2014年>

 セ・リーグ 1試合平均  29,205人  合計 12,616,873人
 パ・リーグ 1試合平均  23,709人  合計 10,242,468人

 1位 巨人      1試合平均 41,921人  年間 3,018,284人
 2位 阪神      1試合平均 37,355人  年間 2,689,593人
 3位 ソフトバンク 1試合平均 34,284人  年間 2,468,442人
 4位 中日      1試合平均 27,790人  年間 2,000,912人
 5位 広島      1試合平均 26,455人  年間 1,904,781人
 6位 日本ハム      1試合平均 26,358人  年間 1,897,781人
 7位 オリックス     1試合平均  23,663人  年間  1,703,734人
 
 以下、DeNA、西武、楽天、ヤクルト、ロッテ

 こうしてみると、上位7球団のうち、ドームが5球団を占めた。やはりドーム効果は大きい。雨天中止が無いだけでなく、気温が低い春先でも梅雨空でも関係なく、適温状態で試合が観戦できる。広島が伸びたのは、文字通りカープ女子のおかげ。今年は黒田復帰でさらに集客力が伸びるのは必至。

 ご覧いただいたように今から40年前のプロ野球はその差が歴然だった。パ・リーグは、セ・リーグの半数にも満たなかったのだ。しかし、今や企業努力が奏功して、ほとんど人気に差が無くなっているのがわかる。逆に、巨人人気が翳り、放送も極端に減った今、セ・リーグも巨人におんぶにだっこではもうダメで、独自の任意回復策を講じなければならない過渡期に来ていることがわかる。手を拱いていたのでは、逆転されるのは時間の問題で、球団経営者は、危機感をもって、対策を考えてほしいものだ。「人気・実力のパ」と呼ばれる時代が到来するのは、さほど遠くないのだから・・・。

 記事作成:3月23日(月)

 追記(4月12日)

 4月8日掲載の記事でも今年のプロ野球の順位を予想したが、今シーズンの巨人のまったく打てない打線にイライラしている。4番坂本、8番村田などありえない打順。長野も1割台と低迷。あれだけの豪華メンバーを揃えておきながら、まったく貧打。小林を育てずに、相川が怪我で戦線離脱するやいなや、阿部をキャッチャーに復帰させる始末。高木や田口など新人や2年目に頼らざるを得ない投手起用も首をかしげる。4連覇は黄色信号だし、下手すれば、私が予想したようにBクラスでシーズンを終えることも現実味を帯びて来た。

 一方、これまで当ブログで何度も語ってきたように、巨人を追われた外国人は、他球団で大活躍するという法則通りに、私が買っていた今年巨人から移籍したロペスはDeNAの首位に大貢献。15試合で6ホームランと巨人時代とは雲泥の差。4月12日(日)終了時点の巨人の打線がいかに打てないか列挙し、喝を入れたい。

 1 金城 .261 松本哲 .063 1番も固定できない。
 2 片岡 .290 片岡・井端の1・2番、二遊間コンビが理想。
 3 亀井 .286 強肩にして打撃センス抜群。ずっと使い続けて欲しい。
 4 坂本 .230 打てない守れない。主将失格。なぜ4番に据えたか意味がわからない
 5 阿部 .314 早々と捕手復帰。
 6 長野 .186 高橋由 .167 長野もまったく打てていない。危機感なし。
 7 井端 .265 守備の達人。打てない守れない坂本に代わってショート起用
 8 村田 .220 年齢的な衰えもあるが、3塁の競争相手がいないので危機感がない。

 本当にロペスは素晴らしい。どうして巨人にいる時に実績を残せなかったが不思議だ。

 開幕から14試合で打率.361で6本塁打。13打点。本塁打と打点部門で2冠。昨年は打率.243で22本塁打57打点とあまりぱっとしない成績で、解雇された。DeNAに拾われた形だが、今季は見違えるように生き生き。ロペスひとりで巨人の合計ホームラン数を上回っている。巨人は自らが獲得した外国人に恵まれたためしがない。これは明らかにフロント(スカウト)の目が節穴だからだ。それが証拠に、残留させたアンダーソンは故障で出遅れ。残留したキューバの主砲のセペダは、開幕から16打席無安打と絶不調。この差は明らかだ。クビにした選手が他球団で大変身し、残した外人が鳴かず飛ばず。
 そして、巨人は3割打者が1人しかいない。ヤクルトではスタメンに5人も3割打者を揃え、防御率No.1。首位のDeNAも3割打者が5人。中日は3人。阪神と広島でも2人ずついる。巨人のチーム打率が.224というのも低すぎる。得点力も低い。これでは勝てない。
 


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