1970年代は奇々怪々。高度経済成長の真っただ中で、時代に勢いがあった。「学生運動」や「安保闘争」、「成田空港反対運動」など、若者の間である意味、共通認識と団結力があった。一方ではや「よど号ハイジャック」、連合赤軍による「あさま山荘事件」、「三菱重工ビル爆破事件」など凄惨な事件も多かった。貧富の差が激しくなり、「オイルショック」も起こった。「公害問題」が深刻化したかと思えば、「日中平和友好条約」を締結し、「パンダブーム」が起きたり、「モナリザブーム」や「スーパーカーブーム」も呼んだ。ファッションでも、「長髪」や「パンタロン」が街を闊歩した。ありとあらゆるサブカルチャーがごちゃまぜで流行し、それは激動の時代だったと言える。
そんな時代背景を反映してか、この時代を象徴するかのように、コンセプトがめちゃくちゃな歌が多数登場した。この時代の象徴的存在だった「キャンディーズ」、「山口百恵」、「ピンクレディー」が解散や引退し、その後、80年代の「アイドルブーム」や90年代の「バンドブーム」、「ダンスユニット」へと変遷していった。本日は、タイトルが示す通り、1960年代以降に登場し、今考えれば、正体不明というか、コンセプトがイマイチわからない不可解な楽曲を取り上げたい。
「帰ってきたヨッパライ」 by フォーククルセイダーズ
https://www.youtube.com/watch?v=1OSp9ykj0HE
「黒猫のタンゴ」や「太陽の季節」(ピンキーとキラーズ)と同時期に流行った。この頃に大ヒットしたのがこの曲。一度は死んで天国への階段を昇って行くが、神様の裁定で、もう一度人間界に送り返されて、生き返る男の物語。植木等の「無責任男」などの時代を経て、このような価値観が世間に蔓延した。何を隠そう実家にレコーダーがあった。
実際のリリースは1967年だったが、私が聴いたのが70年代だったのでここに掲載しました。
「スーダラ節」
https://www.youtube.com/watch?v=63_2L8QHC2o
日本一の無責任男・植木等が映画と共に世に放ち、大ヒットした。一世を風靡したコントグループ「クレージーキャッツ」も犬塚弘さんを除き、全員が鬼籍に入られた。
これも1960年代のヒット曲だが、私が知ったのが70年代だった。
「走れコウタロー」 by ソルティシュガー
https://www.youtube.com/watch?v=eMsVSoHbh24 ←かなり懐かしい映像です!
https://www.youtube.com/watch?v=rtXyggWHNpI
「幸福駅」ブームなど、時代を席巻するようなブームが沸き起こった。それより若干前になるが、超人気サラブレッド「ハイセイコー」の登場により、空前の競馬ブームが沸き起こった1970年代。そのブームに乗っかる形でこの曲が華々しく世に登場し、大ヒットした。1970年7月5日発売されたこの曲は、発売後、口コミでチャートの順位を伸ばし、最終 的に100万枚近いヒットとなり、ソルティー・シュガーは同年の第12回日本レコード大賞新人賞を受賞している。
「狙いうち」 by 山本リンダ
https://www.youtube.com/watch?v=qsprkHobiyg
「ウララウララウラウラで~」という歌詞も不世出だったが、振り付けがパンパじゃなかった。ステージを所狭しと動き回り、蝶になり切る。今見ると笑っちゃうが、当時は大流行した。「どうにもとまらない」も、色っぽさと妖しい腰つきで激しく踊り狂い、それは凄まじかった。
「燃えよドラゴンズ」 by 板東英二
https://www.youtube.com/watch?v=x23TLok8DUI
各球団には応援歌がある。一番有名なのは、巨人の「闘魂こめて」と阪神の「六甲おろし」だ。しかし常勝巨人のV10を阻止し、昭和49年、見事優勝をさらったのは、与那嶺監督率いる中日ドラゴンズだった。その時の優勝メンバーの打順を歌にしてしまったのがこれ。あの板東英二が歌って話題となった。タイトルは、当時の映画の「燃えよドラゴン」のパクリ。私は巨人ファン(O型)だが、この曲は節回しが良くて大好きだった。
「ブルドッグ」 by フォーリーブス
https://www.youtube.com/watch?v=mkRve4QM81s
「にっちもさっちもどーにもブルドッグ!ワォ!」の歌詞が神!パンツに備えたゴムバンドを伸ばしての振りはもはや伝説。後輩のジャニーズもこの曲をカヴァーしている。
「ブーメランストリート」 by 西城秀樹
西城秀樹と言えば、派手なアクションが売り。有名なのは、跪いて「ロ~ラ!」と大絶叫するだけで、女性ファンが失神したほど熱狂した「傷だらけのローラ」だが、この曲もまた、当時の世相を反映し、ブーメラン遊びが大ブレイクした1977年の便乗曲。「ブーメラン」を連呼した後で、ブーメランのように「きっと、あなたは戻って来るだろう」と締めくくる。まるで子供騙しの歌詞に今思えば笑ってしまうが、当時は真面目に聴いていたし、それなりにヒットした。
https://www.youtube.com/watch?v=EMtcnqXPKxM
「昭和枯れすすき」 by さくらと一郎
https://www.youtube.com/watch?v=iHpdxhwgJpA
昭和の暗い世相を反映したような歌。どちらかと言えば暗に焦点を当てたような歌。「貧しさに負けた~、いいえ世間に負けた~」。無理心中でもしそうなヤバい歌詞。よくこんな歌が大ヒットしたものだ。
「モンスター」 by ピンクレディー
https://www.youtube.com/watch?v=SPsFZukc7yY
一世を風靡した彼女たちだが、曲名は今考えると尋常じゃなかった。「透明人間」「カメレオンアーミー」など。「S.O.S」は危険信号のため、放送が自粛された。
ここからは1980年代以降の不思議ソングをお送りします。
「スシ食いねェ!」 by シブガキ隊
https://www.youtube.com/watch?v=OWl6bvSx0ME
個性的な楽曲が多かった。太川陽介の「LuiLui」やLAZYの「赤ずきんちゃん御用心」もそう。
https://www.youtube.com/watch?v=dUSpsgQ-MxY
https://www.youtube.com/watch?v=UiO1TMjH4Vk
路線バス乗継の旅に出演している太川さんは、かつてアイドルだった。レッツゴーヤングの名司会者で、さわやか好青年だった。「ルイルイ」の決めポーズが流行った。
「踊るポンポコリン」 by BBクイーンズ
https://www.youtube.com/watch?v=-r4DIbDe0DM
ご存知「ちびまる子ちゃん」のテーマソングとして、20年以上も続いている。この手の歌は、伊東四朗の「電線マンの電線音頭もあった。三波春夫の「ちゃんちきおけさ」のようなノリがあった。
https://www.youtube.com/watch?v=rYc3QS9vImo
「さよなら人類」 by たま
https://www.youtube.com/watch?v=hw7oAFoddiE
こちらも20年以上も前の平成初期の作品。裸の大将を彷彿させる出で立ちで登場。とにかく風変わりだった。
「無理だ!」 by 爆風スランプ
https://www.youtube.com/watch?v=JCpmS8Y0490
嘉門達夫と並ぶパロディソングの草分け。ベストテン入りしたのだから凄い。共演者の爆笑ぶりをみても、当時はいかにこの手の歌が少なかったかわかる。
「ツッパリHigh School Rock'n Roll」
https://www.youtube.com/watch?v=ja99Uy3BNDU
昭和57年は空前のツッパリブームとなり、ちょうど私は高校時代だった。額にソリを入れ、短ランにリーゼント。学生カバンはぺしゃんこ。肩で風を切って歩くような歩き方。たむろってウンコ座りを決め込み、不良と呼ばれようがクズと呼ばれようが、自分の生き方を貫く。真のツッパリを目指していた時代の象徴が彼ら。当時は竹の子族の後になめネコブームがあり、時代にマッチし、受験戦争からはみ出た若者の気持ちを代弁しているようなところがウケた。
「私の彼はサラリーマン」 by シャインズ
https://www.youtube.com/watch?v=RykB69Hzn6I
これは1990年代の楽曲。イッキやコンパ、カラオケで盛り上がりそうな曲。この頃はバブル時期だったこともあり、豊かな時代を反映して歌にも余裕が感じられる。
「日本全国酒飲み音頭」 by バラクーダー
https://www.youtube.com/watch?v=7gDMxcI7vnk
景気が良くなる歌。酒飲みを肯定し、支援する激励ソング。
ほかにもお笑いブームに乗っかって「ザ・ぼんち」の「恋のぼんちシート」や派手なアクションで一世を風靡した西城秀樹の「傷だらけのローラ」も凄かった。
https://www.youtube.com/watch?v=3Vf699gCSJU
https://www.youtube.com/watch?v=vVdyMZAy_Es
さて、今日紹介したのはほんの氷山の一角。これまでの音楽シーンには得体の知れない歌が山のように存在する。でもそれがその時代の代表曲でもある。よく「歌は世につれ人につれ」というが、歌はその時代の生きた鏡のような存在で、不景気の時には暗めの歌が流行り、活気に満ち、勢いがある時には人々に元気を与える歌、震災の際には、日本中がひとつになって、絆を意識させる曲が巷に流れた。いつの時代も人間は歌と共に歩んでいることを実感した。今日紹介した曲は、ともすれば異端児のような存在だったかもしれないが、間違いなく人々が支持し、時には愛した歌だったことをここで力説したい。
ミュージックシーンは時代で新たな音楽を生み、新しいスターが登場するもので、それが時代を越え、世代を跨いで人々の心にいつまでも深く刻まれ、後世に残されていくものだと思う。
記事作成:平成26年10月6日(月)~7日(火)