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Channel: 時遊人SUZUのひとり言
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現実離れしたテレビドラマ

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 1980年代は、私が高校・大学時代を過ごした頃である。バブルに踊らされ、それは飽食の時代と呼ばれ、物質面で豊かな時期だった。しかし、同時に横浜銀蝿に代表されるようなツッパリが世相を反映したように、リーゼント頭に長ラン、ボンタンの奇抜な服装に根性焼きなどの不良が蔓延り、受験戦争や校内暴力、家庭内暴力、いじめ、暴走族、鍵っ子、落ちこぼれなどが社会問題化するなど教育問題が取り沙汰された。そんな荒れた学校現場を象徴するかのように、テレビドラマもまたそれらを誇張し、独特な視点で描かれた。特にTBS系列やフジテレビ系列の20時台は、現実離れした場面設定で、いかつい内容のものが目白押しだった。得てしてそれは、「大映テレビ」制作の番組に集約されていたと思う。

 このテレビ会社は、とにかくシビアでマニアック。セリフがとことんクサくて極端な描写で社会風刺として煽り立てていた。例えば、出生や生い立ちに纏わる隠された秘密、喧嘩、いじめつらみ、積年の因縁、殺伐とした家庭環境、傷心などを包み隠さず、オーバーなくらい堂々と表現した演出が目を引いた。そして降りかかる数々の苦難や試練を主人公が乗り越えていく様を描いていた。

 では、そうした1980年代特有のドラマを10作品ピックアップして振り返りたいと思う。

 1.スケバン刑事

 特に第2シリーズの「少女鉄仮面伝説」はありえない展開が続出。幼少期から、鉄仮面を付け、素顔を隠して生活。かつてのスポ根もののような現実離れしたストーリー。17年間も仮面を外さずに生活し、ある日、いきなり17歳の高校生で特命刑事に任命される展開。そして仮面が割れて登場したのは五代陽子(南野陽子)という黒髪の長い美少女。17年間も顔を洗えなかったわけだから、皮膚炎を発症してもおかしくない展開だが、そこはドラマ。

 決め台詞がまた泣かせる。、敵の目の前にヨーヨーを投げた後、組み込まれている桜の代紋(旭日章)を見せて「鉄仮面に顔を奪われ、十(とお)と七とせ、生まれの明かしさえ立たんこの私(あてえ)が何の因果か警察(マッポ)の手先。」で始まる名乗りの口上を行い、次回予告では「おまんら、許さんぜよ!」とのたまう。大いに笑わせてもらった。

 このドラマは斎藤由貴が演じた第1シリーズの続編として制作・放映された。この番組は「東映」の制作で、フジテレビで1985年11月から42話放送された。吉沢秋絵と相楽ハル子が共演した。

http://www.youtube.com/watch?v=GKD7yekKqes

http://www.youtube.com/watch?v=g_J7TPYM_lg

 2.スチュワーデス物語

 ご存知、ドジでのろまな亀の堀ちえみ演じる新人スチュワーデス・松本千秋と「教官!」というセリフが流行語になった村沢浩(風間杜夫)との恋愛や厳しい訓練風景を描いた大映テレビ制作のドラマ。あまりにも臭すぎるセリフのオンパレード。極端で直情径行な性格、いかつくてオーバー表現ばかりが記憶にある。そして最大の珍事は、教官の風間杜夫の弱みを握り、足蹴に扱う片平なぎさの存在。ことあるごとに義手をチラ付けせ、彼を意のままに操る。そうした鬱憤を訓練生にぶつけていたとしか思えない。山咲千里や高樹澪、白石まるみ、秋野暢子、石立鉄男(故人)、前田吟も出演していた。

 このドラマはTBS系列で、1983年10月から22話放送された。大映テレビは、ご存知スーパースターとして引退した山口百恵の「赤いシリーズ」を世に送った番組制作会社。「夜明けの刑事」や「明日の刑事」など情に訴えるような内容が多かった。

http://www.youtube.com/watch?v=OF-6bcQCPOA

 3.花嫁衣裳は誰が着る

 1986年(昭和61年)4月23日 から1986年(昭和61年)10月15日までフジテレビ系列で放送された。主演は堀ちえみ、 伊藤かずえ。父親を知らない少女がデザイナーを目指して数々の苦難を乗り越え、成功し幸せをつかむまでを描いたテレビドラマ。大映テレビ製作。全24話。堀ちえみ主演のテレビドラマの時間枠は2作目にあたる。

 「父を知らず、三歳で母を失った少女にただ一つ許されていたのは夢を見る事であった。 この物語は、その儚い夢を大事に育てた少女の愛のロマンである。」という冒頭部のナレーションがこの制作会社のお約束である。そして出生や生い立ちが不遇で、苦難との戦いを強いられる根性物語だ。

 出演者は堀ちえみ、伊藤かずえ、松村雄基、岡田奈々、高橋昌也、名古屋章などお馴染みの面々である。主題歌を歌う椎名恵の「愛は眠らない」は名曲だった。

http://www.youtube.com/watch?v=JKh1XElidKo

 4.スクールウォーズ

 ご存知スポコンもの。日本テレビ系列で、1984年10月から26回放送。制作はやはり大映テレビ。伏見工業がモデルで、泣き虫先生として名を馳せた山口良治先生をモチーフにして制作された。荒れた学校の不良学生をラグビーを通して目的意識を与え、更正させる内容。「ALL FOR ONE  ONE FOR ALL」という言葉はこの時メジャーになった。笑えるのは番長同士の果し合いのような場面や不良連中同士の柵などが描かれ、仲間を抜けられずに葛藤する場面もあった。オープニングの校舎のガラスを叩き割るシーン、廊下を暴走二輪車が走り回る絵、超リーゼント頭に長ランボンタンの出で立ちは、当時の世相を物語る。荒んだ心の闇を巧みに描写していた。今ではあのような不良っぽい格好は、騎士団、桜木花道、AKBINGOの司会を担当したバッドボーイズの佐田正樹、それにROOKIESだけだろう。

 出演者も今考えると懐かしい。主役の滝沢賢治役に山下真司、岡田奈々、松村雄基、宮田恭男、高野浩和イソップ)、伊藤かずえ、梅宮辰夫、鶴見辰吾、坂上二郎などいわゆる「大映」ファミリーの面々であった。好評を得、続編や映画版も制作された。

http://www.youtube.com/watch?v=pUcJ77towDo

 5.美少女戦士セーラームーン(実写版)

 2003年10月から49話制作された。1990年代にテレビアニメ化され大ブームとなった武内直子の漫画『美少女戦士セーラームーン』を原作に、CBC・電通・東映製作によって制作され、TBS系列各局で毎週土曜7:30〜8:00に放送された。

 こちらは元々アニメがメインだったので、実写版が登場した時にはかなり違和感があった。格闘シーンなど動きがぎこちなかったり、衣装と日本の女の子とのギャップもあった。原作、アニメ独特の「髪の色」は変身後のみ。変身前は全員が黒髪か茶髪。派手なセーラー服に身を包み、激しいアクションシーンなどをこなしていた。変身ポーズがハイライトだった。

  • 月野うさぎ / セーラームーン / セレニティ - 沢井美優
  • 水野亜美 / セーラーマーキュリー - 浜千咲(幼少期:松元環季)
  • 火野レイ / セーラーマーズ - 北川景子(幼少期:田中明)
  • 木野まこと / セーラージュピター - 安座間美優(幼少期:鳴海美翔)
  • 愛野美奈子 / セーラーヴィーナス - 小松彩夏
  •  私は、北川景子がメジャーになってから、この番組に出演していたことを知った。実は子供が小さかったので、一緒に見て、しかも全話DVDに録画してあった。

    http://www.youtube.com/watch?v=hfrFxfwB1fQ

     6.少女に何が起ったか

     1985年1月から12話放送)TBS系列で放送 された大映テレビ製作のテレビドラマ。小泉今日子の初主演連続ドラマである。あらすじは以下の通り。

     北海道の稚内市抜海で育った少女・野川 雪(小泉今日子)。高校卒業後、漁港で働いていたが、母の死の直後に現れた謎の男から、亡き父は有名なピアニストであり、そして東音楽大学学長の息子であると聞かされる。父を勘当したという学長に対し「両親に謝罪し結婚を認める」「自分を東家の人間と認める」を要求。東京の東家に乗り込んでゆく…。

     戸籍の父親の欄は空白、他にも証拠なしとして周囲から嘲られ、罵られるが、学長の取り計らいで親子関係が判明するまで、東家のメイドとして働く事になった。そして東音楽大学へ特待生として入学。同じ大学へ通う東家の娘、美津子と取り巻きのお嬢様学生、東家の人間、深夜0時になると現れる刑事などに悩まされながらも、雪はピアノ科助教授、大津の指導と特待生達の友情の中でピアノの腕を上達させて行く。その一方、東音楽大学内での裏口入学問題の捜査が静かに進んでいた…。

     いじめや嫌がらせの極致。ひとつひとつのセリフが固くてわざとらしい。極端な言い回しやアクセントが変な感じを受けた。何を隠そう、ドラマの中で、主人公の小泉今日子が逃避行を企てて、極寒の北海道抜海駅に降り立った場面を見て、私は翌年の6月にロケ現場を訪れた。ドラマに登場した小さな駅舎の朱塗りの格子柄のガラス戸を目の当たりにして感激した覚えがある。

     出演者は小泉今日子、辰巳琢郎、賀来千香子、柳沢慎吾、辺見マリ、長門裕之、松村雄基、岸田今日子、石立鉄男、宇津井健など

    http://www.youtube.com/watch?v=A-Xznp_NINc

     7.噂の刑事トミーとマツ

     1979年から1982年の水曜日20: 00 ‐20:54(JST、1982年9月までは20:00 ‐20:55)にTBS系ほかで放送されていた大人気、高視聴率のアクションコメディ刑事ドラマである。やはり制作は大映テレビだ。

     外見も性格も対照的な2人の刑事、警視庁富士見署捜査課の岡野富夫(トミー)と松山進(マツ)の名コンビが時には衝突し時には協力しながら事件を解決まで導く。トミーは気の弱い刑事であるが優男で女性にもてる。マツは直情型の刑事で、女好きであるものの不細工で背が低く、シークレットブーツを愛用しており「世界一踵の高い靴の男」と言われている。各話のクライマックスの格闘・銃撃戦シーンで怖じ気づくトミーにマツがしびれを切らし、「男女のト・ミ・コー」とトミーを怒鳴りつけると、トミーが耳をピクピクと震わせた後急に発奮し、あっと言う間に悪党をなぎ倒すと言う展開が定番となっていた。

     出演者は国広富之、松崎しげる、清水章吾、井川比佐志、林隆三、石立鉄男、志穂美悦子など

    http://www.youtube.com/watch?v=Y9IyCB-qGCs

     8.不良少女と呼ばれて

     1984年4月17日~9月25日にTBS系列で放送された大映テレビ製作のテレビドラマ。原作は舞楽者である原笙子の自伝的小説。平均視聴率18.3%。主人公の曽我笙子が、母親の「あなたさえ生まれていなければ…」という言葉から非行に走る。だが、ひとりの青年の愛により、彼女は更生していくというストーリー。

     出演者は、主役に伊藤麻衣子、国広富之、伊藤かずえ、松村雄基、比企理恵、小林哲子、山田邦子。高橋昌也、高橋恵子、名古屋章、中村晃子、岡田奈々、三ツ矢歌子、中条静夫といった大映テレビではファミリー的なキャスティングだった。

    http://www.youtube.com/watch?v=jfKzo7LmwFw

     9.ヤヌスの鏡

     1985年(昭和60年)12月4日 - 1986年(昭和61年)4月16日にフジテレビ系列で放映された、杉浦幸主演のテレビドラマ。全18回(これとは別に番外編1回)。フィルム撮影だが、番外編はVTR編集によるものであった。放映時間は毎週水曜日・20:00 - 20:54。特徴的な演出で話題となった、いわゆる「大映ドラマ」のうちの一つ。

     「古代ローマの神・ヤヌスは、物事の内と外を同時に見ることができたという。この物語は、ヤヌスにもう1つの心を覗かれてしまった少女の壮大なロマンである。もし、あなたに、もう1つ顔があったら・・・」。(オープニング・ナレーションより)

     普段は真面目で気弱な優等生・裕美が、突然、別人格である凶悪な不良少女・ユミになり、夜の繁華街を我が物顔で闊歩し、暴走族などを相手に合気道の技を使って大暴れする。そんな裕美とユミの姿を通して、誰もが抱える変身願望と多重人格の恐怖を描くサスペンス調の学園ドラマである。
     主人公の小沢裕美は、多重人格の少女。裕美の母が高校生だった時、交際相手の子を妊娠し、挙げ句、その交際相手である男からも捨てられてしまう。裕美の母は、両親の諌めにも耳を貸さずに、裕美を私生児として出産。その後、あることが理由で赤子の裕美を残して入水自殺をし他界してしまう。そのことが深い傷となり、祖母は裕美に対して厳しい躾で育てるが、裕美の母を非難し否定するような祖母の言葉の暴力や折檻により、裕美は自分の心を強く抑圧することとなる。そのことにより祖母の折檻を連想させるガラスや陶器類の割れる音(正確には破壊する場面を目撃したり、その場面を思い出したりという場合もこれに該当する)、裕美自身がぶたれたり(誰かがぶたれる光景を見ただけでも)、お香の匂い(お香以外にも、裕美自身にとって苦手と感じる“煙を発するものの臭い”)などが変身のきっかけとなり、裕美(ヒロミ)とユミの二つの顔(人格)が交互に現れる。

     出演者は主役に杉浦幸、山下真司、風見慎吾、河合その子、宮川一朗太、大沢逸美、前田吟、吉行和子、高橋悦史、中条静夫という大映テレビのお馴染みの顔ぶれ。

    http://www.youtube.com/watch?v=JL8xO-BQYPk

    10.ポニーテールは振り向かない

     TBS系列でテレビドラマ(1985年10月12日 - 1986年3月29日)化された(大映テレビ製作)。
     「この物語は、3歳で母と別れ18歳で父を失いながらもあらゆる迫害(ハンディキャップ)と戦い、振り向くことなくドラマーとしての自己を確立した一少女と、挫折しながらもやがて己の道を開いた若者たちの記録である」(オープニングナレーションより)。

     未記は名ジャズドラマーの父からドラムを教わり腕を磨いていた。やがて到来したロックの時代に馴染めず、ドラムを捨てた一家は貧困に追い込まれ、母は家出、未記は非行に身を堕し女子少年院に収監された。18歳で父が死に、再び不良の世界に舞い戻ったが、音楽の世界に希望を見い出し世界一のスーパーロックバンド結成を誓う。

     出演者は主役に伊藤かずえ、松村雄基、鶴見辰吾、国広富之、坂上忍、岡田奈々、片平なぎさ、名古屋章と同じキャスティング。

    http://www.youtube.com/watch?v=YMY5kGUKf2g

     他にも同様の当時の社会問題を風刺したやりすぎ感のあるドラマには「スワンの涙」、「天使のアッパーカット」、「このこ誰の子?」、「セーラー服反逆同盟」、「乳姉妹」、「家なき子」、「積木くずし」、「アリエスの乙女たち」、「プロゴルファー祈子」など学園モノや家庭の問題を取り上げた内容が主流だった。この頃のドラマで共通するのは、派手な不良の服装と髪型と化粧、廃れた性格、映像では暗めのザラついたフィルム撮影。いかつくていかにもという印象。おぞましさとおどろおどろしい雰囲気をわざとらしく作り出していた。そして面白いことに、大映テレビ制作の学園モノのドラマは、決まって同じ雰囲気と同じ共演者で占められていた。

     伊藤かずえ、松村雄基、片平なぎさ、山下真司、中条静夫(故人)、大沢逸美、名古屋章(故人)、高橋昌也、岡田奈々など。おそらくそのテレビ会社専属の俳優陣なのだろう。中には既に芸能界を引退して一銭から退いてしまった方も少なくない。安永亜衣、杉浦幸、中康次らがそうである。

     また、番組の主題歌からヒットした歌も多い。多くの歌手がメジャーデビューを果たした。麻倉未稀、小比類巻かほる、椎名恵、「YouTube」のオープニング映像をリンクしたので是非ご覧あれ。

     最後に、よくよく考えてみると、水曜日の20時台の学園ドラマは、大映テレビに割り振られた時間だったように思う。かつて木下恵介アワーが存在したように。そして毎回、番組名こそ変われども、出演者はほとんど同じで、番組の基本コンセプトも同様で、似たようなストーリーが展開された。良くも悪くもそれが時代だったという印象がある。

     参考記事

     「大映ドラマ80年代名作グラフィティ」

     http://homepage1.nifty.com/dorama/daiei80.htm

     「大映テレビドラマ特集」

     http://www.murauchi.com/store/dvd/daieiTV/

     記事作成:6月2日(日)


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