金儲けのヒントはどこにも転がっていて、日常の何気ない生活から便利グッズを開発してひと山当てた方もいるし、インスタント麺のアイディアを提供したとされる大阪の主婦は、毎年のように特許税が入り億万長者になったと聞く。また、青色発光ダイオードを研究開発した一流メーカーの技術者だった男性は、その特許権を巡って裁判で勝利し、こちらも巨額の富を得た後、その大企業を辞めて自らが会社を設立して新たに起業することとなった。かといえば、ドクター中松氏のように、発明してもなかなか商品化に至らず、あるいはヒットに結びつかないご苦労の絶えない方もいる。だから世の中は面白いのかもしれない。
では通販に見る戦略として「ジャパネットたかた」を例に、いくつかの視点で話をしてみたい。発想次第で一攫千金も夢ではない。大阪の商人風に言えば「儲けのヒント」になれば幸いだ。
1 客のニーズに応じた季節限定商品を販売
かつては、通販の王道商品といえば、家庭用ルームランナーとリクライニング式のマッサージ器だった。もちろんそれらは、高価ながら絶大な人気を誇ったロングセラー商品であり、健康志向の高い日本人ならではの売れ筋商品だと言える。
時代は移り、今、同社のベストセラー商品になっているものに「レイコップ」というダニ取り専用クリーナーがある。画期的なその製品は、今爆発的な人気で、生産が追いつかず在庫切れの状況が続いているらしい。どうしてこんなに売れるのか。それは主婦にとってとても助かるグッドアイディア製品だからだ。特に、梅雨時は重宝する。現代のライフスタイルを考えた場合、少子化で夫婦共働きが当たり前のご時世だ。日中は仕事に出るために自宅を空けることが多い。したがって布団を週末くらいしか干せない。梅雨の時は、曇天や雨天が多くなり、なかなか布団をベランダや庭に干せない。じめじめした湿気がこもり、カビやダニが発生しや環境下に置かれる。そんな時に、帰宅後にコンセントに繋いで電源を入れればすぐに使える「レイコップ」は、家庭の心強い味方だ。布団の上からクリーナーを上下左右にスライドさせるだけで紫外線で除菌クリーニング完了。ハウスダストやアトピー皮膚炎、気管支炎などを未然に防いでくれる。これはありがたい。
また、少し前までなら、一般的な家庭の主婦は掃除や洗濯などの家事全般を午前中にのうちに片付けて、昼過ぎのメロドラマや韓流ドラマ、あるいは情報バラエティ番組を見て過ごす方が多かった。午後3時を過ぎると夕飯の買出しに出かけ、メニューを思案し、保育園や幼稚園に子供を迎えに行き、夕食の支度に取り掛かる。それが毎日続くのだから、息のつく間もないほど忙しい。ところが今は、社会保障制度や育児支援制度が充実し、奥様たちは、結婚後も出産後も引き続き仕事を継続し、あるいはパートなどでも限られた時間で生活の経済的支援を行っている。こうした多忙を極める日常でストレスを抱える主婦も多い中、家事や育児を軽減してくれるグッズほどあり難いものはない。
それに目をつけた(聞こえは悪いが)製品を開発すれば、ヒット商品につながる可能性はより高まる。そういえば思い当たる節がある。かつてそのようなコンセプトで大ヒットした商品があった。24時間いつでも入れてお湯の入れ替え不要の循環風呂(湯名人)がそれで、家事の中でも重労働だった風呂洗いの手間を省いてくれた。これが当たると、各メーカーは、こぞって類似製品を開発して販売したが、その後、サルモネラ菌が繁殖で肺炎や皮膚炎が蔓延し、ブームはたちどころに去ったのは言うまでもない。
ところで、ベストセラー商品として、部屋の隅々を全自動で勝手に動き回り、フロアの清掃をしてくれる「お掃除ロボット」があった。こちらも複数のメーカーで製造しているが、その草分けが「ルンバ」という「iRobot社」製の製品で、可愛いらしい円形のデザインが功を奏して独身女性や主婦に大いにウケた。
更には、ペットが飼えないマンションなどでは、癒し効果を与えてくれる犬型ロボット「アイボ」が流行した時代もあった。ハウスダストを除去する「空気清浄機」や肩こり解消の「低周波治療器」が売れに売れた時期もあった。また長年ベストセラーを続けているのが数々の調理器具だ。野菜ジュースが簡単に作れるマシーン「マジックブレット」や何でもすぱすぱ切れるダイヤモンドシャープナー(包丁鋭ぎ器)、そしてどんな野菜でも簡単にスライスしたり、どんな切り方でも自由自在に行える「スピードスライサー」。これも包丁扱いが苦手な主婦には大助かり。そして取っ手を付け替えるだけで焦げ付かないマルチフライパン(中央に赤い丸印が描かれたおなじみの品)や熱効率の良い一枚で5役の5層鍋もバカ売れ。こちらもまた何枚も鍋をそろえる必要がない分、キッチンスペースを有効活用できる優れもの。
また主婦をターゲットにすれば、美容や健康グッズもヒットする可能性が高まる。運動しなくても、腰に巻き、バイブレーターの働きで腹筋を引き締めウェストを細くする効果のある「スレンダートーンエボリューション」(腹筋ベルト)なども家事をやりながら効果があることでヒットに結びついた。もちろん日ごろ運動不足気味のサラリーマンにも爆発的に売れた。やはり売れるキーワードは時短(時間短縮)と節約(エコ)らしい。加えて手軽でより効果的な成果が望めるグッズに人気が集まるようだ。
この通販番組がウケるもうひとつの理由は、数日間無料で使用でき、気に入らなかったら返品可能というお試し期間が設定されている点。買う意思がさほどなくても、試用してみて、もし効果が絶大だと確認でき、期待がもてるようであれば、そのままお買い上げに結びつく。知らず知らずに期間が過ぎていて、半強制的に購入させられる場合もあるし、返品時の手数料は客負担になることで、煩わしくて面倒くさいので返品せず、そのまま購入と思う人もいるかもしれない。これも戦略のひとつだ。
さらに通販の販売戦略として、売ったらそれで終わりではない。アフターサポートもしっかりしている。客が購入し、実際に使った後の感想や改善点をアンケートし、逐一改良し、再販売するという顧客密着型のサービスを行っていることで、信用を得られ、その後のリターン客の取り込みにも繋がる。
デジカメやビデオカメラ(everioが多い)、パソコン(NECとダイナブックが多い)などのIT関連は、モデルチェンジごとに年々機能がアップする。ジャパネットでは古い洗濯機や掃除機を下取りしてくれることで、買い替えの決断にも弾みがつく。
そして、ジャパネットの戦略で優れているのは、分割で買っても金利手数料はジャパネット負担。つまり、一括で買っても分割でかっても支払い総額は一緒。会社側からしてみれば、売り掛けを作ることになる。消費者としてみれば、月々いくらまでなら生活に支障は出ないという判断で、決断力は高まる。さらに複数のカード会社と提携し、支払いも口座からとなる。つまり手持ちの財布から現金が出て行かないため、喪失感や出し惜しみ感が軽減される点も実は大きい。主婦は特に、財布の紐を握って日々、家計のやりくりをしているため、倹約や節約には相当気を配っている。ここを切り崩す戦略が重要なのだ。
2 TV通販番組放送の時間帯
どの商品が生活に直結し、便利で役立つかが通販業者の成功の鍵で、文字通り「時間の節約」となるグッズを開発することが重要なキーワードとなる。しかも同社が優れているのが、主婦がテレビを観ている時間が多い昼下がりの時間帯に通販番組を生放送で行っていることだ。自社スタジオを持つ同社は、一番放送権料が安い時間帯を狙って、あえてBS放送チャンネルで放送するからコストも大幅に抑えられ、その分、価格に反映できる。
さらに戦略のひとつとして、期間限定、台数(本数)限定で販売していることだ。これが購買意欲を掻き立てる。人間、限定品にありつけたときの喜びは倍加する。希少な製品をゲット出来た時のうれしさは半端ない。多少高額でも買ってよかったと満足感も増すのだ。そこに目をつけ、本当は在庫があるのに限定品と謳って販売しているのかもしれない。
3 折り込み広告
店舗型の家電量販店やデパートなどは週末近くになると広告が入るが、通販はあえて月曜日や火曜日に出す。火曜日は百貨店の休業日になっているケースが多く、買い物にいけない主婦層にはカタログショッピング感覚でフリーダイヤルの電話やメール、インターネットなど様々な媒体でお気に入りの商品が容易に選べて購入できる通販は、買い物には有利。しかも平日の昼間の空き時間にウィンドーショッピングにも似た雰囲気で各通販サイトをネットサーフィンしてめぼしい商品を品定めできる。商品も複数の画像や映像で確認できるものもあるので、現物を直視しなくても、おおよその見当はつく。
週末は大概、数多くの折込が入るので、目移りしてしまい、なかなか判断できず、購入を先延ばしにするケースが多くなる。そしてウィークデーに発注すれば、週末に商品到着。家族が揃っている前で購入商品のお披露目ができる。わざわざ高いガソリン代や交通費を払ってお店に出向き、あれやこれやと各フロアを疲れるまではしごしたり、たくさんある製品を見比べ、価格を相談し、支払いを行うなどしなければならない手間は相当な負担で、通販は、そこまでせずとも時間と無駄な出費を抑えられ節約になるという寸法だ。しかも支払いは現金不要のカード決済だ。出不精の方にはもってこいだし、週末は家族サービスにも専念できる。これは楽出だ、便利で重宝すること請け合いだ。
4 顔の見える販売体制システム
「ジャパネットたかた」が凄いのは、高田社長じきじきに通販番組に登場し、商品を自らが説明する点だ。自社製品を社長自身がPRすることは大きなメリットがある。最高責任者が登場し、その商品をきちんと説明できるということは、隅々まで熟知していることになり、責任感が増す。販売への強い意欲と信念という点で猛烈なアピールとなる。この高田社長、若く見えるが実は60歳を優に超えている。しかし滑舌がよく、物真似までされるほどのトレードマークの甲高い声とユニークな話し方も、まるで実演販売に似たスタイルの通販番組には好都合。購買意欲をくすぐる話術にも実に長けている。しかも細身でイケメンなので、主婦層に絶大な人気がある。無論社長としての求心力は半端ないし、商品説明も力説する分、説得力がある。
また、他の社員も大勢テレビ出演し、アットホームで明るい社風をPRしている。社長自身が強烈な個性を発揮し、番組のPR用にアニメキャラで登場し、オリジナルソングまで制作し、その中で「申し込み電話番号」を覚えやすい語呂合わせとフレーズで流すという熱の入れよう。
極めつけは、イメージアップのために社員総出で「恋するフォーチュンクッキー」のPVを制作し、出演している点も大いに評価できる。これにより、明るい社風と、とかく通販業界ではありがちな見えづらい部分が取り払われ、不透明性が薄れ、信頼度が増し、実に見通しの良い販売形態が敷かれたことが奏功している。リレーションも良い印象を受ける。消費者は商品を画面を通してじかに見れ、性能や機能などを目で見て確認できることから有益性を実感する。まがい物は一切なく、信用できるまともな製品であることを認識し、安心感や信頼度がアップする。見よこの和気藹々で楽しげな職場環境!さすが九州に本拠を構える会社だけのことはある。
「恋するフォーチュンクッキー ジャパネットたかた編」
5 メーカーとタイアップしたオリジナル商品
ここでしか買えないオリジナルの製品をメーカーと共同開発している。ケルヒャーの高圧洗浄機やスチームクリーナーでは、7~9種類ものノズルやブラシをセットで提供。価格も据え置き。これは買い得感やお値打ち感がぐっと増す。また。よく見かけるものに、通常よりも蔵書数や使えるアプリを増量した電子辞書、PCとセットでデジカメやメディアカード、さらにはプリンターがついたり、ビデオカメラにはセットでDISCにコピーできるブルーレイやDVDライターなるユニット、さらには三脚までついてくる。その分、価格を下げてほしいと思えるようなおまけまであるが、一緒に買おうと思っていた方にはかなり割安。最近はタブレットもついてくるケースもあるし、ネットと契約すれば100円でPCが買えたりする製品まで登場。いやがおうにも購買意欲をそそられる。また、ジャパネットならではのユニークな商品も期間限定で登場したりする。リビングでテレビを観ながら腹筋を鍛えられる座椅子「腹筋くんDX」とか暑い夏に快適な睡眠を約束するひんやりシート「ドライミングパッド」もまた売れ線らしい。
公式ホームページはコチラ → http://www.japanet.co.jp/shopping/
以上、駆け足で「ジャパネットたかた」の販売戦略の一例を見てみた。では今後はどういう商品販売を心がければいいのだろうか。それはズバリ、高齢者を意識した製品開発と生活により密着した関連便利グッズの販売にあると思う。つまり、これからますます後期高齢者が増加するご時勢で、顧客ターゲットはもはや主婦層だけでなく、高齢者向けの医療機器や健康グッズ、さらには環境に優しい商品がもてはやされるようになる筈だ。これだけ70歳代以上の方が増えている現状を鑑みれば、老後を支える生活関連グッズは売れ筋商品の最上位にランクされてしかるべきだ。各通販会社はこのことも念頭において、販売商品の枠を広げていただけたら有難い。また、これだけ充実した販売網(ネットワーク)が確立している同社には、ぜひ海外進出をお願いしたい、九州に本社を置く同社なら。まずは親日家が多い台湾やタイ、ベトナムやフィリピン、さらにはシンガポールやインドという具合で販売戦略を拡張してほしい。そこには関税面や低価格の商品提供などクリアしなければならない障害は山積しているが、同社なら十分対応可能。元から日本製品は世界屈指のトップブランドで、家電は故障知らず性能はぴか一であることはお墨付きである。ただし、韓国と中国は外してもらいたい。両国は70年も前の戦争での遺恨がいまだにくすぶり、ビジネスパートナーとしては協力関係が得られない。何かと日本を敵視した対応や政策を押し通す。ことあるごとに、日本政府や日本製品を非難し、不買運動やボイコットなどありとあらゆる工作を断行し、悪者に仕立て上げようと画策するに違いない。このような国家とは絶縁し、取引関係も反故にすべきだ。もしジャパネットの関係者が当ブログのこの記事をお読みいただけているなら、ぜひ英断をお願いしたい。
記事作成:7月8日(火)
追記
このような記事を書いた後で、7月12日に「ジャパネットたかた」の高田明社長(65歳)が来年1月で社長を退任することが明らかになった。後任は長男で現在副社長の旭人氏(35歳)。なんと東京大学卒。
私が記事を書くと、なぜかそれが決まって注目を浴びるというジンクスは健在。不思議な力(神の手?)が働いている気がしてならない。