「旧暦と太陽暦で季節にズレがあるのはおかしくないか?」 それがこの記事を書くにあたっての率直な感想だ。
明治5年まで使われていた旧暦は太陰暦といい、現在の太陽暦(グレゴリオ暦)とは一ヶ月程度のずれが生じるという。そういえば、テレビのニュースで「暦の上では今日は立春です」とよく耳にするが、実際の季節感と比べてもかなりずれている。2月で立春と言われても我が東北では寒い日が続き、とても春が来たとは到底思えない。
例えば、2018年の立春は2月4日(日)である。もちろんその前日が節分で、文字通り季節を分ける日となる。この場合は冬から春へ切り替わる日となる。しかし、実際のところ、2月4日は、地域差はあるものの、日本列島は寒気に覆われる日々が続き、厳冬期の真っ只中であり、とても春の気配など感じられないのが実情だと思う。
同様に「立秋」は、真夏の盛りである8月初旬に訪れる。それは梅雨明けして間もない頃で、いよいよ夏本番という時期にあたり、お盆過ぎまで、下手すると9月のお彼岸まで猛暑が続くことがある昨今では、どうも合わない気がしてしまう。
なぜ、未だに旧暦をそのまま使用するのか意味がわからない。ただ単に季節を先取りしているだけではないのか。日本人はあまりこうしたことに意義を唱えないが、それは日本古来の侘び寂びを昔のまま伝統として、あるいは佳き歴史として暮らしの中に残したいという感慨の表れか。
では旧暦の立春である2月4日は、新暦(グレゴリオ暦)ではいつに当るかと言うと、3月
20日であり、そうなるとちょうど春彼岸の頃で、これなら春が来たという気分になれるし、
しっくり来る感じがする。
季節感を表す「二十四節気」は定気法でによるもので、現在の気候風土に合わせて毎年日付が多少変わるようにできているが、それでも昔から使用している季節感を表す言葉だけに、現代にそぐわないし、違和感を感じてしまうものもあるため、このような「ずれ」が生じているにほかならない。現状に合わないものは、感覚を鈍らせるだけなので修正したほうが子孫のためにも良いのではないかと思っている。
旧暦の季節分け 太陽暦での季節分け(現在)
1・2・3月 春 3・4・5月 春
4・5・6月 夏 → 6・7・8月 夏
7・8・9月 秋 9・10・11月 秋
10・11・12月 冬 12・1・2月 冬
古式の伝統行事が季節がずれた状態で、現代も当時のまま残っているものに日本の国技である「大相撲」がある。今年2018年の例で見ると以下の通りだ
初(1月)場所 両国 1月14日(日)~28日(日)
春(3月)場所 大阪 3月11日(日)~25日(日)
夏(5月)場所 両国 5月13日(日)~27日(日)今の暦ではまだ春
名古屋(7月)場所名古屋 7月 8日(日)~22日(日)
秋(9月)場所 両国 9月 9日(日)~23日(日)
九州(11月)場所 福岡 11月11日(日)~25日(日)
https://www.youtube.com/watch?v=XQBHm-qnwek
https://www.youtube.com/watch?v=RslPskQ8BeI
現在の暦と重なる場所もあるが、江戸時代に始まった大相撲は、旧暦の場所設定で行われている。
ではどうして旧暦を明治5年に、思い立ったように現在の「太陽暦」に変更したのだろうか?
喧々諤々議論した上で、さぞかしやむを得ない深い事情があってのことかと思いきや、「Wikipedia」には予想外の詳細理由が記されてあった。
「明治五年(1872)十二月三日を以って、明治六年(1873)一月一日とする」
明治政府は明治五年十一月九日(西暦1872年12月9日)に改暦詔書を出し、時刻法も従来の一日十二辰刻制から一日24時間の定刻制に替えることを布達した。布告から施行までわずか23日という「神業」実施であり、しかも十二月(師走)がわずか二日で終わってしまったのです。当時の庶民の慌てようは相当なものだった。
どうしてこれほどのスピード実施になったのか。それはズバリ、明治政府の財政危機があったと言われている。翌年の明治六年は、旧暦で閏月があり、一年が十三カ月になり、官吏の給料を13回支払わなければならず、その他の出費もかさむこととなる。そこで悪巧みのように考えついたのが、いっそのこと太陽暦を採用すればそのような懸念はなくなり、その上、明治五年の十二月も二日しかなければ、十二月の給料までもがまるまる節約できると考えた。あまりにも姑息で横暴な話だが、これがスピード改暦の真相だったようだ。
こんな政府の財政逼迫という理由だけで暦を改変したとなると、やり方は乱暴すぎると誰もが感じるだろう。時節の政府の意向で、庶民が無理を強いられ、季節感もめったくちゃになり、その結果、暦と実際の季節の移ろいとかが無意味となったのは無論、これほどまでにズレが生じてしまった直接の原因だとしたら、政治の不始末によって、悪い影響をすべて被った結果といえる。こうした政府の愚策で国民が振り回されたのは、あまりにも物言わず、物分りの良すぎる日本人気質ゆえのせいだろう。
最後に、太陽暦(ユリウス暦・グレゴリオ暦)と太陰暦(太陰太陽暦)の違いを説明した動画を紹介して結びとしたい。
記事作成:1月22日(月)