スポーツの世界には前評判を覆すような大勝利を遂げることがある。これを人は「大番狂わせ」と呼ぶ。これはスポーツ自体が人間同士がぶつかる筋書きのないドラマであることを証明しているかのようだ。長いスポーツの歴史において、我らが日本代表チームが、そんな戦前予想を見返すような勝ちを収めた試合をお送りしたい。
1996年アトランタ五輪、男子サッカーのマイアミの奇跡
新世代のサッカー日本代表が一次リーグ初戦で優勝候補筆頭のブラジルと対戦。誰もがブラジルの大勝を予想した。しかし、キーパー川口の鉄壁の守りと幸運が重なり、日本が虎の子の1点を全員で守り抜き、1-0で接戦をものにし、大金星を挙げた。彼らは後に日本を背負って立つ精鋭メンバーだった。前園、中田英、服部、伊東、城、遠藤、松田直樹らがスタメン出場した。
2003年 横浜F・マリノス 最終戦で4位から優勝する快挙
この年は2ステージ制だったが、4チームが勝ち点3の中にひしめき合う大混戦で最終節を迎えた。首位のジュビロと3位マリノスが対戦、3位の市原が東京ベルディに2-0で勝利し、この時点でマリノスは4位。そして2位の鹿島は5位の浦和レッズと対戦。ロスタイムに横浜が逆転勝ちし、この時点で鹿島が首位に立ったが、その直後、なんと浦和がロスタイムで同点に追いつき、マリノスが4位から1位に躍り出た。そのまま鹿島が引き分けで試合終了。勝ち点26で3チームが並んだが、得失点差で交わしての大逆転優勝となった。この時の監督は、あの岡田武史で、就任1年目で第1、第2両ステージで優勝し、年間チャンピオンに。マリノスを1年で立て直してしまった。
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2004年アジア杯、奇跡のPK
対ヨルダン戦で見せた不屈の魂がボールに乗り移ったかのような勝負。ピッチ状態が悪く、PK場所を移動しての再開。GK川口が神がかり的なファインセーブを連発し、そのピンチを救った。当時監督だったジーコも、崖っぷちからの大逆転にお喜び。メンバーを見れば、中村俊輔、中田英、福西、三都主、宮本、鈴木隆之、中澤など黄金世代だ。
https://www.youtube.com/watch?v=hmg4oTYwesk
2006年第1回WBCで日本が初代王者に
アメリカ寄りの判定の前にも日本代表は動じず、正々堂々とスモールベースボールを展開し、それが実を結んだ。そこまでの道のりは険しかった。何度も敗退寸前の瀬戸際に追い込まれ、それでも絶望の淵から這い上がって来た。しかし、王JAPANのミラクル仕掛けで、宿敵キューバを倒し、WBC初代王者に輝いた。その3年後の日本代表(侍JAPAN)はイチローの活躍などでV2を達成した。2大会連続で松坂大輔がMVPを獲得した。この第1回目のメンバーは黄金世代で、松坂世代だった。投手は松坂、杉内、和田、黒田、岩隈、涌井、前田、上原、渡辺俊などで、野手も西岡、里崎、城島、阿部、川崎、松中、岩村、宮本、松井稼、稲葉、多村、青木、福留、糸井、イチローなど後にメジャーで活躍する豪華メンバーだった。
準決勝 対韓国戦
決勝 対キューバ戦
2011年女子サッカーW杯ドイツ大会、なでしこJAPANの大快挙
世界ランク1位の強豪アメリカと決勝で対戦したなでしこ。一度も勝利したことがない相手だけに、下馬評では誰もがアメリカの圧勝を予想した。しかし、慎重さがあるアメリカ選手相手に、日本は組織で守り、前後半90分で得点を与えない粘り強い試合展開を実行。そして延長前半にワンバック選手の強烈ヘッドで先制を許してしまう。しかし日本代表は諦めなかった。延長後半、終了間際に宮間のコーナーキックをベテランの澤がヒールで後方に流し、見事に起死回生の同点ゴールを決めた。
その後、死闘を繰り広げ、PK戦にもつれ込み、GK海堀の奇跡のディフェンスで勝利をもぎ取った。この数か月前、日本では未曾有の大震災で約2万人の人々が犠牲になった。東北の人々に勇気を与える劇的な初優勝となった。
澤同点ゴール https://www.youtube.com/watch?v=wlAKXnnQIiw
PK戦 https://www.youtube.com/watch?v=8T3zFR9nA-E
ハイライト
2015年ラグビーW杯の南アフリカを初撃破
過去3回Vの南アフリカと開幕試合でぶつかった日本代表。優勝候補を相手に一歩も怯まない闘いっぷりで、最後まで諦めず、終了間際にトライを決めて大逆転で歴史的勝利を挙げた。小兵揃いに日本人の快挙に世界中のラグビーファンが驚いた。そして惜しみない拍手と歓声を送った。
いずれもスカッと胸がすくような勝ちっぷりだ。しかし、そこに至るまでは並大抵の努力ではなかった。日本代表が世界の檜舞台で体格の大きい選手たちと互角に渡り合い、堂々とした戦いっぷりで頂点に立ったのだ。日本人は某国のように判定に不服を言って暴言を吐いて出て行ったり、あるいは相手へのラフプレーやスポーツにあるまじき暴力など行ったりしない。幼少期からスポーツマンシップに則り、正々堂々と戦うように教育されてきたからだ。だから審判の判定には食ってかかることなどは考えられない。筋書きのないドラマを正しく真っ向勝負するからこそ、そこに感動が生まれるのだと思う。
今回は、「大番狂わせ」というタイトルで失礼だったかもしれないが、これがフロッグと呼ばれないためにも、これからも私たちを感涙させてくれるプレーを待ち望みたいものだ。
記事作成:9月23日(水)