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Channel: 時遊人SUZUのひとり言
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昭和哀歌

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 東京オリンピック生まれの私にとって、昭和を過ごしたのが24年、そして平成も26年が過ぎた。つまりいつの間にか平成が昭和を越えてしまった。江戸時代なら、平均寿命を越えている。あの松尾芭蕉が、弟子の曾良を伴って「奥の細道」を旅したのが41歳の時。福島県に現存する芭蕉ゆかりの地には、彼の句碑と共に、銅像が置かれている。それを目の当たりにすると、芭蕉=小柄な老人の印象が強い。芭蕉より9歳も年上になってしまった今、平成よりも幼少期から青春時代を過ごした昭和のほうが思い出深いし、口ずさむ歌も懐メロのほうが多くなった。そこで今日は、昭和を代表する歌の中で、世相を反映するような暗めの哀歌(エレジー)を取り上げたい。おそらく1970年代の楽曲が、その時代背景からそういう傾向の曲が多く輩出されたことに気づくだろう。

 「昭和枯れすすき」(1975年) by さくらと一郎

https://www.youtube.com/watch?v=fRk8S4LeSyU

 「貧しさに負けた~、いえ世間に負けた~、この町も追われた~いっそ~きれいに死のうか~」

 心中ソング?この歌詞でよく放送禁止にならなかったものだ。

 「喝采」(1972年) by ちあきなおみ

https://www.youtube.com/watch?v=WsAYvdcwYjU

 「いつものように幕が開き、恋の唄歌う私に届いた知らせは、黒い縁どりがありました」

 コロッケの物真似がいつの間にか一人歩きしているが、「レコード大賞」を受賞した名曲。

 「真夜中のギター」(1969年) by 千賀かほる 

https://www.youtube.com/watch?v=U4z7UwmdzDQ

 「街のどこかに淋しがり屋がひとり~今にも泣きそうに夜明けまでギターを奏いている」

 「わかれうた」(1978年) by 中島みゆき

https://www.youtube.com/watch?v=6d0Vf_OZhgs

 「徐に倒れてだれかの名を呼び続けたことがありますか」歌詞が強烈。

 「ひとり上手」「うらみ・ます」も衝撃的なほど暗い曲だった

 「迷い道」(1977年) by 渡辺真知子

https://www.youtube.com/watch?v=QS3wRPH4rmE

 「現在過去未来あの人に会ったなら~私はいつまでも待ってると誰か伝えて~」

 私が中1の頃にザベストテンで初めて聞いて衝撃を受けた曲。女性シガーソングライターで、八神純子と並んで歌唱力はダントツだった。

 「ラヴ・イズ・オバー」(1980年) by 欧陽菲菲

https://www.youtube.com/watch?v=Be_YZiQm3Yk

 「Love is over 悲しいけれど 终わりにしよう きりがないから・・・」

 「恋人よ」(1980年) by 五輪真弓
 
 「枯葉散る夕暮れは~ 来る日の寒さをものがたり~雨に壊れたベンチには愛をささやく歌も無い」

 イントロからして壮絶感や悲壮感が漂う。歌詞のすべての描写が絶望に襲われている印象。

 グレープ三部作(縁切り寺・精霊流し・無縁坂)1975年

https://www.youtube.com/watch?v=oZZVseAN96A

https://www.youtube.com/watch?v=l8Oo89vah50

https://www.youtube.com/watch?v=ubgloM1LtaE

 人生を噛みしめるような歌詞と曲調。何か死の恐怖すら感じてしまう。さだまさしでは「空蝉」や「まほろば」、「飛梅」」、「追伸もかなり暗い。

 「神田川」(1973年) by かぐや姫

https://www.youtube.com/watch?v=JSgyHiKESGw

 「あなたはもう忘れたかしら、赤い手ぬぐいマフラーにして」

 貧乏学生が裸電球ひとつの4畳半で過ごした極貧の学生時代を回顧するような情緒が満載の歌詞。

 「帰らざる日々」(1976年) by アリス

https://www.youtube.com/watch?v=o2hx4On-zBw

 「最後の~電話を~握りしめて~何も話せず ただじっと~あなたの声を聞けば~何もいらない~、命を飲み干して~目を閉じる」「酒びたりの日も今日限り~私は一人で死んでいく~」

 失恋からこれから自殺しようと考えている女性の心情を歌い上げた。

 「防人の詩」(年) by さだまさし

https://www.youtube.com/watch?v=JjtmzOeRAMY

 「教えてください~、山は死にますか河は死にますか~」

 日露戦争の壮絶な戦を描いた映画【二百三高地」の主題歌。命の儚さをせつせつと魂込めて歌い上げた。映画は仲代達也、あおい輝彦、夏目雅子、テレビドラマ版が田村高廣、永島敏行、坂口良子が熱演した。明治天皇の御前で乃木大将が嗚咽しながら戦況報告する場面は圧巻。

https://www.youtube.com/watch?v=UdTze_0gXb4

https://www.youtube.com/watch?v=7cCuVXsZvBA

 他には、谷村新司の「群青」や「玄冬記」、クラフトの「僕にまかせてください」、THE虎舞竜の「ロード」(平成)、都はるみの「北の宿から」、石川さゆりの「天城越え」、一度聞いたら死を決意してしまうとして発売&放送禁止となったハンガリー自殺の聖歌「暗い日曜日」がある。

 昭和は明治維新以降、もっとも長い時代だった。戦争の歴史と言われるほど、激動で多くの日本人が戦場に狩り出されて、そして「天皇陛下万歳!」と叫んで御国のために死ぬことを運命づけられた。その後、戦後の混乱期を経て復興が成り、そして朝鮮戦争特需や経済成長、東京五輪開催というように驚異的な発展を遂げた日本。そんな時代背景や世相を反映して、さまざまな歌が世に出ることとなった。
 本日紹介した歌は、「暗」や「陰」の部分にあえてスポットを当ててみた。昭和=負の歴史や遺産が多数あるため、過ぎ去りし時代は、とかくセピア色やモノクロに褪せていってしまいがち。そうした時代を反映した歌が世を席巻した感が強い。
 昭和と平成を比べた場合、歌詞や曲調は劇的に変ったといえる。「人は世につれ歌につれ」という名言があるように、歌はその時代を象徴し、様々な悲哀や情愛を歌に込めるものである。だから年齢にかかわらず、終生歌は人に愛されるのだ。現代においては、今日紹介した歌は、時代思潮をかんがみた場合、受け入れ難いものに映ってしまうに違いない。

 さて、2015年はどのような歌が世の中を潤してくれるのだろうか。

 記事作成:平成26年11月21日(金)


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