「春はセンバツから」とか「球春」という言葉がある。3月下旬に開幕する「全国選抜高校野球」を形容するものだが、文字通り甲子園の選抜大会が始まる頃から急に暖かくなり、南から桜前線が北上する一年でもっとも美しい季節を迎える。日本人にとって、その春の到来を告げる風物詩の最たるものが「全国選抜高校野球」ということが言えるだろう。
さて、今年で90回を迎えた「センバツ」だが、各地区ブロックを勝ち抜き、選ばれた代表校(33校)に、21世紀枠3校を加えた計36校が出場する。とりわけ、選手宣誓は瀬戸内高校の主将が務めることに決まった。
そこで疑問だが、ふと我が福島県代表は、春夏通じて一度も「選手宣誓」をした記憶がないことに気づいた。そこで、この90回を数えるセンバツ、昨年102回を数えた夏の選手権大会で、一度も選手宣誓をしたことがない都道府県を調べてみた。すると、案の定、宣誓をしたことがないのは、47都道府県の中で福島県と青森県の二県しかないことが判明した。しかもいずれも東北のチームだ。
その原因はセンバツは、各地区から選出されたチームが出場できるが、東北だけが優勝経験が無いことで知られるとおり、この地区の代表校は、大きく負け越しており、全国レベルで比較しても、かなり低いため、この地区(六県)からは例年2チームしか選出されていない。近畿の6校や四国の3校とはえらい違いだ。したがって、そもそも東北地区からの出場校が少ないだけでなく、福島と青森は秋の東北大会で決勝に進出することもダントツに少ない。過去に磐城と三沢、東北、仙台育英、光星学院などが甲子園大会で決勝に進んだことはあるが、いずれも優勝は果たせていない。
東北では、宮城県のレベルが高く、東北高校や仙台育英が常連であり、近年、青森山田や花巻東が台頭し、我が福島県代表は、県内無敵の強さを誇る聖光学院を持ってしても、なかなかセンバツ代表には選ばれなかった。
では、本題のセンバツでの選手宣誓校になった一覧と都道府県別のランキングを紹介したい。なお資料は下記より引用させていただきました。
「まるほんネット」 http://maruhon38.net/archives/10793#natsu
年 | 主将 | 学校 |
1930 | 三瀬三則 | 台北一中(台湾) |
1931 | 野本定 | 川越中(埼玉) |
1932 | 河村正夫 | 大分商 |
1933 | 田中耕司 | 一宮中(愛知) |
1934 | 記野良雄 | 岐阜商 |
1935 | 熊谷直之 | 東邦商(愛知) |
1936 | 松井栄造 | 岐阜商 |
1937 | 竹村朝治 | 愛知商 |
1938 | 平古場正晴 | 浪華商(大阪) |
1939 | 石井豊 | 中京商(愛知) |
1940 | 加藤幸一 | 東邦商(愛知) |
1941 | 加藤政一 | 岐阜商 |
1947 | 宮沢澄也 | 松本商(長野) |
1948 | ||
1952 | 栗橋博 | 鳴門(徳島)☆ |
1953 | ||
1954 | 村田敬 | 岡山東商 |
1955 | 吉富信雄 | 鹿児島商 |
1956 | 好田稔 | 滑川(富山) |
1957 | 高山元 | 八幡商(滋賀) |
1958 | 万丈勉 | 函館工(北海道) |
1959 | 杉枝泰生 | 戸畑(福岡) |
1960 | 牧志清順 | 那覇(沖縄) |
1961 | 長池徳士 | 撫養(徳島) |
1962 | 高橋弘 | 滝川(兵庫) |
1963 | 笹野辰夫 | 富山商 |
1964 | 菱川章 | 倉敷工(岡山) |
1965 | 渕上澄雄 | 岐阜短大付 |
1966 | 望月茂男 | 富士宮北(静岡) |
1967 | 西森利次 | 高知☆ |
1968 | 中沢一 | 浜松工(静岡) |
1969 | 川本浩次 | 平安(京都) |
1970 | 内田竜二 | 三田学園(兵庫) |
1971 | 筋原徳夫 | 報徳学園(兵庫) |
1972 | 常田昭夫 | 日大桜丘(東京) |
1973 | 岩崎斉 | 小倉南(福岡) |
1974 | 重田薫 | 防府商(山口) |
1975 | 佐藤功 | 東海大相模(神奈川) |
1976 | 黒田光弘 | 小山(栃木)☆ |
1977 | 平田勝男 | 海星(長崎) |
1978 | 百合幸二郎 | 郡山(奈良) |
1979 | 上野山善久 | 箕島(和歌山) |
1980 | 毎熊淳 | 諫早(長崎) |
1981 | 乗越孝雄 | 尾道商(広島) |
1982 | 鎌田潤 | 郡山(奈良) |
1983 | 正路晃弘 | 広島商 |
1984 | 若木昭仁 | 私神港(兵庫) |
1985 | 阿山正人 | 東洋大姫路(兵庫) |
1986 | 河田哲也 | 高松西(香川) |
1987 | 上羽功晃 | 京都西 |
1988 | 島崎隆之 | 小松島西(徳島) |
1989 | 笠置伸一 | 別府羽室台(大分) |
1990 | 伊藤孝充 | 浜松商(静岡) |
1991 | 山口努 | 旭川竜谷(北海道) |
1992 | 今石将史 | 駒大岩見沢(北海道) |
1993 | 佐藤則之 | 国士舘(東京) |
1994 | 中川仁 | 拓大一(東京) |
1995 | 長谷川大 | 鷲宮(埼玉) |
1996 | 林川大希 | 鹿児島実 |
1997 | 衣川隆夫 | 育英(兵庫) |
1998 | 三好剛 | 京都西 |
1999 | 山口晃弘 | 海星(三重) |
2000 | 林公則 | 作新学院(栃木) |
2001 | 井戸紀彰 | 南部(和歌山) |
2002 | 宮本賢 | 関西(岡山) |
2003 | 金森将平 | 福井 |
2004 | 佐々木陽祐 | 秋田商 |
2005 | 林裕也 | 駒大苫小牧(北海道) |
2006 | 太田恵太 | 岐阜城北 |
2007 | 飯窪宏太 | 千葉経大付 |
2008 | 矢澤英典 | 中京大中京(愛知) |
2009 | 高市廉 | 今治西(愛媛) |
2010 | 西田明央 | 北照(北海道) |
2011 | 野山慎介 | 創志学園(岡山) |
2012 | 阿部翔人 | 石巻工(宮城) |
2013 | 河野祐斗 | 鳴門(徳島) |
2014 | 中林航輝 | 広島新庄 |
2015 | 篠原涼 | 敦賀気比(福井) |
2016 | 樋本尚也 | 小豆島(香川) |
2017 | 添田真聖 | 作新学院(栃木) |
2018 | 新保利於 | 瀬戸内(広島) |
センバツ出場校の都道府県別選手宣誓ランキング
1位 愛知県 6回 12位 埼玉県 2回 22位 大阪府 1回
1位 兵庫県 6回 12位 大分県 2回 22位 長野県 1回
3位 岐阜県 5回 12位 鹿児島 2回 22位 沖縄県 1回
3位 北海道 5回 12位 富山県 2回 22位 山口県 1回
5位 徳島県 4回 12位 福岡県 2回 22位 神奈川 1回
5位 岡山県 4回 12位 静岡県 2回 22位 滋賀県 1回
5位 広島県 4回 12位 長崎県 2回 22位 三重県 1回
8位 京都府 3回 12位 奈良県 2回 22位 秋田県 1回
8位 栃木県 3回 12位 和歌山 2回 22位 千葉県 1回
8位 東京都 3回 12位 福井県 2回 22位 宮城県 1回
8位 香川県 3回 台湾の1回は除く
センバツで選手宣誓をした都道府県 31
ところで、選手宣誓は1915年の第1回から行われていたわけではなく、1930年からだそうで、開幕戦を戦ったことがない都道府県でも福島県が唯一だったそうだが、この90回大会は、初の開会式直後のオープニングゲームを引き当てた。センバツで選手宣誓の経験のない都道府県は、青森、山形、岩手、福島の東北4県と茨城、群馬、新潟、山梨など北日本・東日本に多い。それ以外は石川、島根、鳥取、高知、愛媛、佐賀、熊本、宮崎だ。
夏の選手権は、全都道府県の代表が出場できるため、東京と北海道は各2校ずつを除いては、どの府県にもチャンスは平等に与えられているのに、なぜか青森県と福島県は選手宣誓に縁が無い。
ちなみに、夏の選手権も1930年から選手宣誓が始まったが、長い歴史の中で、実施した都道府県をランキングで見ると以下の通り。
1位 愛知県 4回 14位 宮城県 2回 21位 茨城県 1回
1位 京都府 4回 14位 熊本県 2回 21位 高知県 1回
3位 山形県 3回 14位 千葉県 2回 21位 岐阜県 1回
3位 愛媛県 3回 14位 富山県 2回 21位 岡山県 1回
3位 神奈川 3回 14位 三重県 2回 21位 徳島県 1回
3位 福井県 3回 14位 新潟県 2回 21位 岩手県 1回
3位 沖縄県 3回 14位 兵庫県 2回 21位 東京都 1回
3位 栃木県 3回 21位 埼玉県 1回
3位 大阪府 3回 21位 広島県 1回 21位 宮崎県 1回
3位 石川県 3回 21位 島根県 1回 21位 秋田県 1回
3位 鳥取県 3回 21位 静岡県 1回 21位 福岡県 1回
3位 大分県 3回 21位 長野県 1回 21位 山口県 1回
3位 北海道 3回 21位 和歌山 1回 ほかに21位 山梨県・群馬県・佐賀県
以上、40都道府県が夏の選手権大会で選手宣誓を実施。こうしてみると、共通しているのは愛知県や京都府、兵庫県、岐阜県など優勝経験が複数回ある強豪県の代表が「選手宣誓」に当るケースが多いようだ。それだけ出場回数が多いということが言える。夏の甲子園で選手宣誓をしたことがない都道府県は、青森、福島、奈良、滋賀、鹿児島、香川、長崎の7県。
たぶん、これからもくじ引きで選手宣誓が決まるとすれば、春は33分の1、夏はもっと狭き門で毎年47分の1の確率は変わらないので、青森県と福島県が当る可能性は23.5分の1と極めて低い。震災県ということで特例措置でもない限り、当分当りそうも無いのが現状だ。
さて、今日の記事は、センバツを間近に控えた19日に作成したが、いつも不思議に思うのは、高校野球は特に、春先は西高東低が顕著だ。特に雪が多かった今年は、グラウンドが使えない北日本の各チームは、実践練習の不足が否めない。室内練習場が整っている私立高校はまだしも公立は、優秀な選手が皆、全寮制の強豪校に持っていかれる傾向が強い。ぜひ今年こそ、東北に優勝旗を持ち帰ってほしいと願う。
最後に、私自身が心に残った感動的な「選手宣誓」の映像を2つリンクして結びとしたい。それは震災直後のセンバツでのひとコマだった。
https://www.youtube.com/watch?v=PBV-9bHzy2c
被災県の宮城、石巻工業の阿部主将の感動の宣誓