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Channel: 時遊人SUZUのひとり言
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情念がにじみ出る哀歌

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 古今東西、様々な楽曲が世に出たが、暗い歌の代表格と言えば、言わずもがなだが中島みゆきと研ナオコだろう。女性が訝しげに歌う別れの曲は、どこか「恨み節」が漂い情念が滲み出ている。これは男性歌手には出せないし、感情込めて歌えない。今日は、いつもと趣向を変えて、特に世相を反映して昭和の時代に多かった「情念が滲む暗い歌」をお送りしたい。なお、埋め込みした動画サイトの映像は、私がアップしたものではないので、予告なく削除される場合があることを予めご了承の上、ご覧ください。

 圭子の夢は夜ひらく(昭和45年)

 「十五十六十七と私の人生暗かった」

 少女時代に一体何があったのかと相談に乗りたくなるような狂気じみた歌詞。怨念を感じるし、深い嘆きと悲しみが溢れている。この人生の終焉をあのハスキーボイスで情感込めて歌い上げた。ご存知、宇多田ヒカルの母親の藤圭子が歌い大ヒットした曲だが、彼女自身は数奇な人生を送り、最後は不可解な投身自殺を遂げた。謎多き人生劇場だった。

 真夜中のギター(昭和44年)

 「街のどこかに~さみしがりやがひと~り~黙って夜明けまでギターを弾いている」

 千賀かおるが歌い大ヒットした。悲しげなメロディラインだが、どこか希望の光を射すそんな曲に仕上がっている。「愛を失くして なにかを求めて さまよう」がすべて。どうしていいのかわからずに、真夜中にギターを弾く。どうみても近所迷惑だが、それほど打ちひしがれた様子が漂う。

 男と女の話 日吉ミミ(昭和45年)

 「恋人にふられたの~よくある話じゃないか」

 榊原郁恵が物真似で歌った印象が強い。失恋ソングは基本的に失意、悲しみ、後悔などの情念がにじみ出てくる。どうみても明るい雰囲気や情景ではない。

 北の宿から(昭和51年)

 あなた変りはないですか~日ごと寒さがつのります 着てはもらえぬセーターを寒さこらえて編んでます 女ごころの未練でしょう」

 セーターを編む女性はヤバイ・・・。どんな思いを込めてひと編みひと編みしていたのか
 情念どころか怨念すら感じてしまう

 都はるみはこの曲でレコード大賞を受賞した演歌の女王だったが、キャンディーズに対抗して「普通のおばさんに戻りたい」と一時引退したが、戻りきれず芸能界に復帰した。

 天城越え

 「隠しきれない 移り香がいつしかあなたに 浸みついた 誰かに盗られるくらいなら あなたを殺していいですか」「あなた・・・山が燃える~」という歌詞は強烈で、よく放送禁止にならなかったものだ。

 石川さゆりのあの歌唱力抜群の高い声だから、この曲は売れたのだと思う。イントロを聴いただけで鳥肌が立つ。

 昭和枯れすすき(昭和49年)

 「(男)貧しさに負けた~(女)いいえ~世間に負けた~ この街も追われた~いっそこのまま死のうと」

 多額の借金を抱えた男女が、これから心中しようという雰囲気が感じられる怖い歌。さくらと一郎の名曲。この曲がカラオケのデュエットの走りだった気がする。

 恋人よ

 「枯れ葉散る夕暮れは~来る日の寒さをものがたり 恋人よそばにいてこごえる私のそばにいてよ」

 冒頭のイントロ部分が木枯しが枯れ葉を舞いあげて壮絶な情景を表す。すべてを無くし、絶望的になった女性の悲哀が重くのしかかっている印象。五輪真弓さんの歌唱力は半端なかった。彼女があの風貌でこの歌を歌ったから情感がドンピシャで感じ取れた。

 帰らざる日々

 「最後の電話を握り締めて~何も話せず、ただじっ~とあなたの声を聞けば何もいらない~命を飲み干して目を閉じる Bye Bye Bye 私のあなた~Bye Bye Bye私の命~Bye Bye Bye マイラブ~」

 これから自殺しようとする女が、別れた彼氏の声を一度聞きたくて電話をかけた背景が浮かぶ。アリスが登場した時、ガロの二番煎じかと思ったが、ニューミュージック界のトップに君臨したユニットだった。

 夜桜お七

 「赤い鼻緒がぷつりと切れたすげてくれる手ありゃしない 燃えて燃やした肌より白い花

 なんともなまめかしい歌詞に女の情念が漂う。艶やかで透き通る声の坂本冬美ならではの独特な世界観に吸い込まれてしまう。

 うらみ・ます

 https://www.youtube.com/watch?v=-apnKHCgCZE

 「うらみます うtらみます あんたのこと死ぬまで・・・」

 この歌詞を聴いただけでも中島みゆきの恨み節全開で、怖さしか伝わってこない。死んで化けて出てきそうな怨念に背筋が凍りつく。

 かもめはかもめ(昭和53年)

 あきらめました あなたのことはもう 電話もかけない 青空を渡るよりも 見たい夢は
 あるけれど かもめはかもめ ひとりで空を ゆくのがお似合い

 この曲は研ナオコのために中島みゆきが書き下ろした名曲だが、最後は人生や自分の生き方を悟り切ったような歌詞が続く。「醜いアヒルの子」に続く中島みゆきワールドを歌い上げた。

 喝采(昭和47年)

 ちあきなおみが歌い、レコード大賞を受賞した名曲。

 「いつものように幕が開き、恋の歌歌う私に届いた手紙は黒い縁取りがありました」で始まり、回想シーンが始まる。大事な人を故郷に残し、ひとり汽車に乗って都会へと旅立つ女性。その3年後、その人はこの世を旅立つ・・・。その情景が浮かんできそうな哀歌。

 いずれも昭和を代表するような暗くて切なくて怖い歌詞が躍る。しかし、そこには体験者だけが知る壮絶なエピソードが見え隠れする。今の世の中、やれスマホだGPSだのと最先端科学が世の中を闊歩し、心底悩んだり苦しんだりする情景が少ない。だからこんなに情念や悲哀があふれ出るような楽曲は皆無に等しい。やはり時代背景がすべてを物語っている。かつて「歌は世につれ人につれ」という名言を残した名司会者がいた。まさに的を射た表現だと思う。
 昭和生まれの私にとって、歌の変遷を辿るとき、こうした時代錯誤と思えるような情念漂う楽曲があったことを私は忘れないと思う。

 記事作成:10月3日(月)


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