巨人の2016年シーズンが早くも終戦を迎えた。実に情けない。というか無様だ。選手は一生懸命やっているのだろうが、その気概を感じない。勝利に向かってがむしゃらに戦っているという印象を受けない。闘争心むき出しという選手は皆無で、打席に立っても何かやってくれそうだという期待感はないし、迫力もゼロだった。
CS(クライマックスシリーズ)では、体調不良のエース欠場に加え、スタメン起用も監督の意図がわからない。同じ慶應大卒の後輩の山本を2番に据える抜擢起用も疑問だが、打てないギャレット、素行不良で大事な場面で二軍落ちしたクルーズ、捕手の小林誠司は戦犯と言って相応しい。また、杉内、片岡のベテラン勢の故障に加え、高木勇人、マイコラスも期待外れ。昨年から2年連続で菅野を見殺しにする貧打線は何とかならないのか・・・。応援のし甲斐もない。
今季、頑張ったのは阿部、村田、坂本くらいで、長野もダメ。見ていて打てる気がしない。当たり損ねが運良くポテンヒットになるのがやっと。また、亀井の急速な衰えも気になった。
今年の巨人の戦い方は、5割ラインを死守するのがやっとで、完全な消化不良。様々な場面で負のスパイラルに陥り、自滅パターンだらけだった。結果、広島の独走を許し、チーム内もちぐはぐ。私を含めファンの失望は大きかった。こうなった敗因は何か?そして来シーズンに向けた補強ポイントを探りたい。
<巨人の弱点>
1 固定しない二塁手、センターラインの弱さ
巨人の二塁手と言って思いつくのはV9時代の土井と篠塚だけ。巨人は昔から二塁手を固定できず、ころころメンバーが変った。私は野球は投手、捕手、二遊間、中堅手、つまりセンターラインが大事だと思っている。鉄壁の二遊間で投手を助けた中日のアライバはその典型例で、守備の名手がいるチームは安定した戦いが出来る。巨人はエラーの多かった坂本が遊撃手では心もとない。ピッチャーは安心して低めにボールを集めて打たせて捕るピッチングが出来ず、つい力んで三振を取りにいく。その結果、コントロールが甘くなって痛打される。足の速い守備範囲の広い、強肩のセンターがいて、ライン上の抜けそうな当たりをセカンドが止めてファインプレーをすれば、投手は随分楽になる。
2 打てない捕手
相川が怪我、阿部が一塁手専任で、小林がスタメンマスクをかぶることが多かった今年の巨人。強肩が売りの小林だが、あまりにも打てなさすぎだし、リードも高校野球並み。捕逸気味のワイルドピッチも多数。あそこであの配球はないだろうという場面が多々あり、見ていてヤキモキしっぱなしだった。彼は高校時代は、広島の野村祐輔とバッテリーを組み、甲子園準優勝。その後、同志社大学を経てノンプロで2年間やってからのプロ入りした。3年目なのでもう27歳だ。中堅の年齢で、今年もゲーム中にマイコラスに「しっかりとれよ小林!」と喝を入れられた。実に嘆かわしい。彼はあまりにもスマートすぎる。泥臭さは皆無で、相手が嫌がるクセのある配球が出来ない。あれでは打たれる。
そして何より打てなさ過ぎるのはプロ失格。捕手は確かに重労働で、守備の要という印象。だから打つのは二の次さんの次というイメージがある。しかし、恋女房として投手を助けるのはリード面だけではなく、打力も重要だ。セ・リーグの打者部門で、規定打席に達した選手の中で最下位の2割4厘では論外。129試合に出場してこの成績では、相手投手に楽な印象を持たれてしまう。相川が40歳を迎えた今、正捕手の座は彼が担うべきだ。しかしその安全牌にあぐらをかいているのか、それを死守しようという気概が感じられない。実松と加藤も35歳を越えている。彼に代わる捕手の育成が課題となる。
巨人の捕手で思いつくのは、森、吉田、山倉、村田、吉原、阿部くらいだが、捕手は長年、固定されてきた。捕手がころころ変わるようでは、配球や打者への攻め方も捕手によって変わってしまう。キャッチング、コーナーワーク、リードは経験がものをいう。しかし、チーム事情からして、捕手は試合を重ねながら上達しなければならない。相手バッターのクセを知り、苦手コースや球種を頭にインプットして置かなければならない。加えてサインプレーなど果たす役割は多い。それだけに勘のよさと回転の早さ、観察力も必要。私が40年以上、日本プロ野球や高校野球を見続けてきた私が見るに、小林はまだまだひよっこだ。研究心が足りない。行き当たりバッタリで構えている。
ちなみに、これまでに私が推す捕手は、野村克也、田淵幸一、福嶋久晃(大洋)、木俣達彦(中日)、八重樫幸雄(ヤクルト)、中尾孝義、古田敦也、城島健司、谷繁元信、阿部慎之助がいる。打力を除けば、近鉄の梨田、巨人の村田、ヤクルトの大矢、西武の伊東阪神の若菜嘉晴と木戸克彦、広島の達川光男が存在感抜群だった。
3 ダメ外人
巨人のスカウト陣はつくづく人を見る目が無いと思う。毎年、使えないダメ外人ばかりを大金はたいて連れて来て、役に立たず、数年でお払い箱。しかもその外人は他球団に移籍すると大活躍するというパターンが30年も続いている。他球団とは大違いだ。
過去、ジョンソンに始まった巨人の獲得外人(FAやトレードで他球団から移籍した外人を除く)で記憶にあるのは、クロマティーくらいしかいない。その彼も打撃は良かったが、外野手としては肩が弱く、他球団に走塁で舐められた。トマソン、ガルベスなどろくでもない使えない外人ばかりだ。外人の獲得が上手いのは、西武、中日、ヤクルト、近鉄だった。日本野球に適応できる資質を見極める能力に長けており、巨人はフロントがアホすぎる。だから、シーズン途中でナベツネに「フロントが補強していないんだから」と高橋監督を擁護する発言が飛び出すのだ。常勝を宿命づけられた球団だからこそ、付け焼刃的に補強し失敗を繰り返すのだ。若い選手を育てようという育成プログラムもない。広島を見習ってほしいものだ。
4 左投手不足
内海、田口、戸根、杉内、今村、山口と駒は多いが、いずれも故障やら不調でパッとしない。巨人は昔から左腕は大成しない。工藤や川口、杉内など外人部隊を獲得して急場を凌いで来た。生え抜きで育てたのは、高橋一三、新浦、宮本、角くらいしか思い浮かばない。内海も絶対的エースと呼ぶには程遠い。真のエース級は高橋だけ。私が買っていた高木も野球賭博で球界を追われた。 どうして巨人のサウスポーは大成しないのか不思議だ。巨人のエースは昔から右腕だらけ。堀内、江川、西本、槙原、桑田、齋藤、上原、菅野くらいだ。今年はサウスポーだけでなく、ローテーションを任された大竹、高木の不調も敗退の元凶。そして先発陣がゲームを作れず、中継ぎ、抑えが勝星を積み重ねるのも問題。勝利の方程式が構築できず終いだった。
5 不運のエース菅野
昨年は防御率1.91でまさかの負け星先行。今年も2.01でよもやの9勝どまり。26試合に先発登板し、9勝6敗。11試合は中継ぎ陣や抑えが打ち込まれ、逆転負けを喫して勝利投手の権利を奪われた、エースを援護できない巨人打線。2年連続で見殺しだ。逆に言うと、菅野が投げると打線が沈黙するジンクス。よくこれで腐らずにやっていると思う。辛抱強いA型の宿命か?
6 先発陣の好投をフイにする救援陣
昨年、ノーコンでフォアボール連発で安定感に欠けたマシソンが、今年は見違えるように良くなった。155km/h前後のストレートは威力十分。今季はなんと70試合に登板し、41ホールドを記録した。彼は来日以来、5年で300試合も登板している最大の功労者。十分頑張ったと思う。地肩の強さがものを言っている。来年は33歳になる最強右腕だが、年齢的なことを考えて、来季は50試合前後で済むような試合展開を作れるかが鍵だ。
しかし、一方で同じセットアッパーの山口がノーコンで自滅し、1勝6敗と背信につぐ背信。防御率4.88では話にならない。出ると打たれるの繰り返し。それでも首脳陣は根気強く彼を使ったが、結果が出せなかった。33歳という年齢で今季63試合登板はきつい。2試合に1回は投げ、常にチームに帯同し、休む暇も無い状況だった。
また、頼みの澤村も太りすぎで体のキレが悪く、腕が触れていない。コントロールが甘くなり、一発を喰らう場面が多く、先発陣の頑張りをフイにすること頻繁。第一、救援で66試合投げて37セーブは立派な数字に思えるが、6勝4敗は不可解。つまり、終盤に僅差でリードしている場面で起用され、自分の不始末で同点に追いつかれ、9回裏に味方が勝ち越して勝利投手になったに過ぎない。言うなれば先発無視の無責任勝利を積み上げただけだ。これでは先発が試合を作っても安心して後を任せられない。広島のストッパーの中﨑は、24歳で61試合に登板し、34セーブだが、防御率は澤村(2.66)の半分以下の1.32と安定感抜群だった。
7 期待にこたえられないドラフト1位
昨季は即戦力の大学生2人を獲得した。しかし、1位の桜井(立命館大)は一軍に定着できず、ファーム暮らし。2位の俊足が売りの早稲田卒の重信もオープン戦での華々しい活躍とは裏腹に、ほとんどが二軍だった。巨人は外人の獲得だけでなく、新人も獲得下手。逆指名で入団した1位(高橋、上原、阿部)は別格として、くじ1位で大成したのは松井くらいしか浮かばない。いずれも巨人というプレッシャー負け。辻内、大田など期待されながら結果を出せない。岡本和真もこのままでは終われない。
巨人は打線も左投手に弱いし、初物(初対戦の投手)にも弱い。応用力がないというか適応力がないのだ。打てなければ、セフティーバントやバスターなど相手が嫌がる戦法をとればいいものを、スマートに野球をやりすぎるきらいがある。
8 O型高橋監督のコーチ陣はO型、選手はAB型とO型に固執
原監督はA型だった。ゆえにコーチ陣はA型主流で固めた。つまり細かく緻密な野球、管理野球を徹底するためだった。しかし、高橋由伸が監督に就任するやいなや、コーチ陣を刷新した。しかも自分と気が合うO型ばかりを登用した。とてもわかりやすい。O型に親分から見ると、B型は扱いやすいが、神経質で細かいA型は個性もないので気に食わない。だからA型を一気に外し、O型コーチに入れ替えたのだ。来季はO型の二岡二軍コーチを一軍に昇格させることも決定した。
選手はO型監督が重用するのはA型以外の選手だ。O型は長野、片岡、小林、AB型は坂本、村田、亀井で、B型は山本。 A型は相川、阿部、重信、立岡だが、怪我が多く、プレッシャーに弱いので、O型監督は安心して使えない。阿部は原監督時代の遺産で、高橋政権下では捕手ではなく、一塁選任となった。
高橋由伸(O型監督)の首脳陣
O型コーチ 村田ヘッド、福王、二岡、内田、豊田、田代
B型コーチ 井上、木村、高田、井端、村田善、尾花
かなり今年の巨人の短所を指摘してきたが、来年のオーダーはどうなるか予想を立ててみたい。
打 線 先発投手 リリーフ
1 坂本 1 菅野 マシソン
2 片岡(セカンド)/長野/重信 2 マイコラス 澤村
3 糸井 3 桜井 今村
4 マギー 4 内海 新外国人
5 阿部 5 田口
6 村田/岡本 6 高木
7 長野/クルーズ(セカンド)
8 相川/小林 起用 微妙 杉内、宮國、大竹、山口、戸根
控え 亀井、鈴木尚、吉川、堂上、橋本到、立岡
FAでオリックス糸井を獲得するのは確実。ベテランの年齢だが、鋼のような体型と盗塁52個は魅力。打率も3割を打てる実力者。元・楽天のマギーも濃厚。2割8分、30本塁打、90打点を期待できる。マギー獲得に失敗した場合、もしかするとヤクルトのバレンティンにまで食指を伸ばす可能性もある。
私はギャレットとクルーズはあと1年で結果が出せなければ解雇になると見ている。マイコラスも夫人の出産に伴い、アメリカに帰国する可能性がある。亀井は体力的に衰えが目立つ。たぶん視力低下が原因だろうと思う。来季は外野が糸井の加入で出番が少なくなる。いやもしかすると、糸井がFAすれば、人的補償でプロテクト選手を外れ、他球団に移る可能性もある。太田と立岡も一軍に残れるか微妙。松本哲也は飼い殺し。私は彼は鈴木尚広の後継者として足のスペシャリストとして考えればいいと思う。あの守備力は守備固めにも最適だ。
最後に、結論を言わせてもらえれば、今年の優勝は広島カープで良かったと思っている。広島のファンと一体になった連帯感は素晴らしかったし、投打のベテランが引っ張り、若手も彼らを手本としてチーム一丸となって優勝に向かって邁進した。勝利への執念も感じたし、最後まで諦めない強さがあった。一方、巨人はベクトルがバラバラ。攻撃は淡白で、役割分担もなければ、誰かが打ってくれるのを黙って見ている、あるいは待っている状態。迫力もないし、凄みもない。淡々と試合が進んでも、誰かがチャンスメイクをす期待感すら感じない。広島の選手の気概をお手本として貰いたい。ひたむきに一生懸命努力する姿勢を示して欲しい。DeNAにCSで敗れたのも、勝利への執念が明らかに不足していた。敵地なのにあの青一色に染まったファンの応援は見事だった。選手も意気に感じ、実力以上のパフォーマンスが出来たと思う。巨人に欠けているものはそうした気力であり、勝利に突き進む気持ちだ。来シーズンは反省して、ファンを失望させる怠慢プレーをせず、一試合一試合、ひたむきさを示して欲しいと思う。
記事作成:10月11日(火)